記事: HARIO V60 NEO - HUNDURAS LA LAJA / TYPICA WASHED

HARIO V60 NEO - HUNDURAS LA LAJA / TYPICA WASHED
ホンジュラス/ラ・ラハ農園ティピカ種がもつ、白い花を思わせる華やかな香りと繊細で透明感のある酸、そしてやわからな甘さ。この三つの要素を調和させるためのレシピを組みました。
まず、挽き目は中粗挽き、湯温はやや高めに設定することで、明るい酸味と甘さの両立を狙います。そして、ティピカ種特有のエレガントな風味を損なわないために、72本のリブをもち湯抜けの速いHARIO V60 NEOを使用し、抽出時間と注湯リズムを精密にコントロールします。
抽出は、最初に蒸らし時間をやや長めにとり、豆の内側までしっかり浸透させることで糖の印象を高め、透明感を保ちながらも丸みのある甘さを引き出します。後半はテンポよく注ぐことでビター感を抑え、フローラルからシトラス、ハニーへと移り変わってゆく風味のグラデーションをつくりあげます。
白い花や洋梨、レモングラスを思わせる香りと、冷めるにつれてゆるやかにひろがるハニーライクな甘さ。みずみずしくクリーンな余韻が最後まで軽やかにつづく一杯をお楽しみください。

使用器具:HARIO V60 NEO
粉量 / 粒度:16g / 中粗挽き (TIMEMORE C3S 24クリック)
湯温 / 湯量:91°C / 240 g (白神山地の水)
時間 - 総湯量 (注湯量)
0 : 00 - 50g (50g)
0 : 45 - 70g (120g)
1 : 30 - 60g (180g)
1 : 50 - 60g (240g)

白い花と洋梨、レモングラスのような香りがふっと立ち上がり、余韻はみずみずしくクリーン。
穏やかで控えめなコーヒーの印象があるホンジュラスから、これほど透明感のあるコーヒーが届いたことに驚きました。
ホンジュラスでコーヒーの栽培が始まったのは18世紀。19世紀には国の主要な農作物としてひろがり、山間部を中心に小さな農家の暮らしを支える存在となりました。標高の高い地域の陽射しと気温差が高品質なコーヒーを生み、家族単位での丁寧な栽培が文化として根づいていったのです。
かつて、ホンジュラスの基準風味をかたちづくってきたのはティピカ種でした。しかし近年、病害耐性や収量の多さを優先した品種改良が進むなかで、徐々に姿を消しつつあります。
そんななかでも、今回ご紹介するラ・ラハ農園がある西部の山岳地帯インティブカ(Intibucá) は例外的な地域です。
インティブカは険しい地形と限られた流通環境ゆえに植え替えの波が緩やか で、ティピカが自然なかたちで残りつづけてきました。長い年月をかけて土地の気候や火山性土壌に馴染んだその樹々は、いまや“地域適応型”の ティピカとして、ほかの産地にはない深みを宿しています。私たちが、ラ・ラハ農園のティピカに惹かれるのは、そこに歴史と風土が凝縮された味わいがあるからかもしれません。
ティピカはアラビカ種のなかでももっとも古い系統のひとつです。イエメンからインドネシア・ジャワ島を経て中米に渡り、世界中の「基準となる風味」をかたちづくってきました。高い木と下垂する枝が特徴で、病害に弱く収量も多くはありません。いっぽうで、糖を多く蓄え、苦味の要因となる成分が少なく、澄んだ酸とやわらかな甘さを生み出します。いわば、“繊細さが強みになる品種”なのです。
ラ・ラハ農園のホセ・マンシア氏は、そのティピカを標高約1,800mの区画で育てています。昼夜の寒暖差が糖の蓄積を促し、ゆっくりと成熟した果実は、まるで調和した自然の美しさのように整った風味をもっています。
生産処理はウォッシュト・プロセス。果肉を除き、残った粘液質を発酵で分解し、水で洗い流す。この「水を介する」工程が、カップの透明感を決めます。発酵の影響を穏やかに抑えることで、育成環境が生む個性――日射量、湿度、昼夜の寒暖差――と、ティピカ本来の構造が、よりクリアに味わいに現れるのです。
ラ・ラハ農園の丁寧な水処理によって磨きあげられたクリーンな印象は、古い品種系統であるティピカのピュアさと、それが残りつづけてきたインティブカの地のテロワールをまっすぐに伝え、奥行きのある味わいを実現しています。
華やかでありながら澄んでいる――ティピカ本来の上品さが、余すことなく表現された一杯です。








