記事: 【Portrait of a Barista】藤岡 美帆 / たまプラーザ店

【Portrait of a Barista】藤岡 美帆 / たまプラーザ店
ウッドベリースタッフのオリジンや内面に迫る「PORTRAIT OF A BARISTA」
今回はたまプラーザ店の藤岡さんに、6つの質問を答えていただきました。
Q1 生まれ育った街について教えてください。
東京都八王子市の南大沢という、多摩ニュータウンにある街で育ちました。東京のほかの市町村や23区と比べると歴史の浅い町ですが、新しく開発された街中は車道と歩道が完全にわかれており、横断歩道も渡らずに歩けるのでファミリー層に人気のエリアです。公園や山などの自然が豊かないっぽうで、駅周辺はアウトレットや大学があり活気に溢れていて住みやすい町なので、私の同級生のなかにも、社会人になって都心に引っ越したあと、結婚して子どもができたりして南大沢にもどってくる人がたくさんいます。
Q2 バリスタを目指したきっかけは?
私の両親は無類のパン好きだったので、「美味しいパンには美味しいコーヒーを」と子どものころからコーヒーは身近な存在でした。
社会人になり一般企業に勤めていたとき、月曜から金曜まで会社で働いて、土日は疲れ果てて家で休んでいるだけという生活を送っていました。ちょうどそのころ、「サードプレイス」という言葉が浸透しはじめた時期で、思い描いていた社会人の生活とはかけ離れているなと感じていた私もまた、家でも職場でもない場所を求めていました。次第に、自分がそういう場所をつくれたらいいなと思うようになり、バリスタを目指すことにしたんです。
そして会社を辞め、べつのカフェを経て、たまプラーザ店の前身となったガルテンコーヒーで働きはじめました。
このお店がある東急百貨店は、たまプラーザに住んでいるファミリーが日常的に買いものにくる場所です。ただ、お店の目の前にひろがる「コモンフィールド」という1000坪の庭は開放感があって、リフレッシュしにくる方も多く、日常にちょっとしたアクセントを加える存在でもあると思います。それこそ「サードプレイス」のような場所としてお客様が楽しんでくださっている姿をみて、とても嬉しく思っています。
Q3 好きなコーヒー豆を教えてください。
ガルテンコーヒー時代から扱っている、エチオピア/タデ農園のデカフェはとくに思い入れのある豆です。
もともと使っていたメキシコのデカフェから豆が切りかわるということでサンプルを二種類送っていただき、当時のスタッフたちと試飲をしたのですが、「こっちのほうが美味しい」と全員の意見が揃うくらい、タデ農園の味と香りは際立っていました。未だにその衝撃を鮮明に覚えています。
たまプラーザ店は、デカフェを頼まれる方がすごく多いのですが、豆が変わったときにみなさん驚かれて、何度も飲みにきてくださったり、豆を買ってくださる方もたくさんいらっしゃいました。
Q4 いまハマっているカルチャー(本や音楽、映画など)を教えてください。
私には、定期的に読み返すマンガがあります。それは『いつかティファニーで朝食を』です。実在するお店を舞台にしたお話なのですが、主人公が台湾に行くエピソードで出てくる朝食をどうしても自分でも食べたくなって、翌日に台湾まで行ってしまいました。そうしたら、たまたま予約したホテルからすぐ近くのところに舞台となったお店があって、朝4時に起きて並んで、朝食 を食べました。
『いつかティファニーで朝食を』は、現状の生活に満足していない主人公が、自分の生活や好きなことを見つめなおす物語なんです。彼女にとってはそれが朝食だったわ けですが、ふだん行動力があるわけでもな私がいきなり台湾にまで行ったのも、当時の生活に違和感をおぼえていたからだと思います。だから、私にとってこのマンガは「私がやりたいことはなんだろう?」「私は何が好きだったっけ?」と思うたびに、読み返す作品になっています。自分の原点を思いださせてくれる存在なんです。
Q5 たまプラーザ店の気に入っているところを教えてください。
ガルテンコーヒー時代からコモンフィールドのお庭が正面にみえる入口付近のソファ席が大好きです。お客様のなかにも、お庭をみながらコーヒーを飲みたいと、その席を選ぶ方も多く、ふたり連れでも席に余裕があるときは横並びに座られる方もいらっしゃいます。
自然光がたくさん入るので、開放的で本当に気持ちがいいんです。雨の日も、雨音の響きを聴きながらゆったりと過ごすことができます。お庭には、さまざまな季節に咲く花やたくさんの木が植えられているので、季節や天気の移り変わりが実感できて、いちばんお気に入りの席です。
Q6 これからの未来のためにしていることは?
私はこれまで、多くの人に恵まれ、さまざまな経験をとおして学ぶ機会をたくさんいただいてきました。今後は、自分も年齢を重ねた立場として、一緒に働くスタッフや自分のまわりにいる人たちをサポートし、いい影響や刺激を与えられる存在になりたいと思っています。そのためにも、ひろい視野をもって柔軟に物事を捉え、まわりの意見を受け入れながら、誰かの背中をそっと押せるようにしたいと思います