グアテマラ フロレンシア農園 ブルボン ウォッシュド

グアテマラの静かな傑作、フロレンシア農園ブルボン

穏やかな酸と、キャラメルのように柔らかい甘み。世界でもっとも美しいといわれるアティトラン湖を望む高地で育ったスペシャルティコーヒーです。

口に含むと、アップルやストーンフルーツの風味がやさしく広がり、アーモンドの香ばしさとダークチョコレートの余韻が続いていく......。

まるで美しい湖を映すかのごとく、澄みきった味わいと深い甘みが静かに重なります。

感じられるフレーバー

火山と湖が育む、穏やかな甘みのテロワール

フロレンシア農園は、グアテマラ市の南西、アマティトラン湖を見下ろすサンタ・エレナ・バリラス高地に位置します。標高は約1,570mと、国内では特別に高いわけではありませんが、夜間も比較的温暖で、果実内の有機酸がゆるやかに分解されるため、酸味は穏やかで角のない印象に仕上がります。

一方で、近くに広がるアマティトラン湖の存在が、昼夜の気温差をやわらげ、周囲の木々に安定した湿度をもたらします。湖面から反射する光と、火山性ミネラルを多く含む肥沃な土壌が光合成を助け、果実の成熟をゆっくりと整える。その結果、糖分がじっくりと蓄えられ、ストーンフルーツやチョコレートを思わせる柔らかな甘みが生まれます。

この調和のとれた環境がもたらすのは、キャラメルのように深く、透明感のある後味。華やかさよりも静けさに宿る美しさ......それこそが、グアテマラ・フロレンシア農園のテロワールの真髄です。

グアテマラのコーヒーと、その歩み

グアテマラにコーヒーの木が根づいたのは、18世紀の終わり。修道士たちが小さなアラビカの苗を持ち込んだのが始まりでした。
19世紀に入ると、アラビカ・ブルボンが各地に広がり、やがて国の誇りとなります。このころ、アティトラン湖を見下ろす高地に「フィンカ・フロレンシア」も誕生しました。

火山がもたらす肥沃な土壌を武器に、グアテマラはやがて “黒い黄金” とも呼ばれるコーヒー輸出国へと成長します。しかし繁栄の影で、土地を失った先住民たちは過酷な労働に従事することを余儀なくされ、コーヒーは富と痛みの両方を象徴する存在となってしまいます。

20世紀に入ると、産地ごとの個性が注目されるようになり、アンティグア、ウエウエテナンゴ、コバン......地域の名がそのまま品質を語る言葉となっていきます。けれども、内戦や価格暴落によって農家は再び苦境に立たされました。そんな時代に芽生えたのが、小さな生産者たちによる「協同」の精神です。彼らは力を合わせて精製や輸出を担い、自分たちの名で世界へとコーヒーを届けるように成長していきます。

そして21世紀、グアテマラは世界でも屈指のスペシャルティコーヒー生産国として知られるようになります。火山と湖が織りなす多様なテロワール、そして人々の誇りと情熱、その積み重ねが、今日のグアテマラコーヒーをかたちづくっているのです。

クラシック品種ブルボンの魅力

グアテマラの伝統を語るうえで欠かせないのが、「ブルボン」というアラビカ種のクラシック品種です。18世紀に中南米へ伝わり、その繊細な風味とバランスのよさから、長く人々に愛されてきました。
一方で、ブルボンは「コーヒーノキの大敵」と呼ばれる “さび病” に弱く、育てるのが難しい品種でもあります。それでもなお、多くの農園がこの品種を守り続けているのは、他のどんな品種にも代えがたい味わいがあるからなのです。

果実には糖分（スクロース）が多く含まれ、焙煎の過程でキャラメルやチョコレートのような香ばしい甘みが生まれます。酸味はリンゴやチェリーを思わせるやわらかさで、甘みとの調和が美しく、全体に丸みと透明感のある味わいに仕上がります。
ブルボンならではの、穏やかで上品な美しさが、いまも世界中のロースターを惹きつけてやまない所以です。

ウォッシュドが導くクリーンな余韻

このロットはウォッシュドプロセスで精製されています。発酵と水洗の工程をていねいに行うことで、ブルボン品種の繊細な風味がクリアに引き出されます。
クリーンカップと穏やかな酸、そしてキャラメルのような甘さが共存する味わいは、まさにクラシック・グアテマラの王道スタイルといえるでしょう。

ゆるやかな時間を味わう、グアテマラの現在地

カップに注げば、まず感じるのは落ち着いたチョコレートの香り。口に含むと、キャラメルのような甘みの中に、ほんのりと柑橘の明るさが重なり、バランスの取れた味わいへと広がります。
派手なフルーツ感ではなく、糖の熟成から生まれる“シュガーブラウニング”の深い甘さが中心に据えられ、余韻は驚くほどクリーン。飲み進めるうちに、丸みを帯びた甘さとやさしい酸が静かに溶け合い、心地よい安定感を残していきます。

それはまるで、火山の大地と湖の風が育んだ味わいの結晶”。
クラシックなブルボンの魅力を、いま改めて感じてみてください。

【生産国】グアテマラ
【地域】アマティトラン
【農園】フロレンシア農園
【生産者】ファン・ラモン・フローレス
【標高】1,570m
【品種】ブルボン
【プロセス】ウォッシュド
【焙煎度】深煎り

Country：Guatemala
Region：Amatitlan
Farm：Florencia
Producer：Juan Ramón Flores
Altitude：1,570m
Varietals：Bourbon
Process： Washed
Rost Level：Dark Roast