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記事: On the Mark : Our Logo's Redesign

On the Mark : Our Logo's Redesign

Part01 ロゴが描きだす、"これまで"と"これから" 井上 心平

ウッドベリーコーヒーのブランドロゴが生まれ変わりました。
九月の玉川髙島屋 S.C. 店のオープンにあわせて、ロゴマークと各種プロダクトのデザインを刷新し、心機一転、新しい一歩を踏み出しました。
新しいロゴは木漏れ日をモチーフとしています。「W」の文字を変形し、葉のかたちを模した図柄を四つ繋ぎあわせることで、中央に光を表す図形が浮かびあがります。線のみで構成されたロゴからは明るさや軽やかさも感じられ、全体的に光を感じられるあたたかみのあるデザインとなっています。



木漏れ日を浴びながら穏やかな時間を過ごすような憩いの場を提供したい。そして、コーヒーで世界を明るく照らしたい。このロゴには、そんな私たちの想いが込められています。
ロースター/カフェにとって、ロゴは自分たちのアイデンティティを示す顔そのものです。そのため、今回のリニューアルは自分たちのブランドコンセプトを改めて確認する大切なプロセスでもありました。


新たなステージへ

ロゴを新しくしようという話がもちあがったのは、玉川髙島屋 S.C. 店・駒沢店・大井町店と、立てつづけに新規出店が決まったときのこと。
いずれも百貨店や商業施設への出店。自分たちですこしずつ路面店を増やしてきたこれまでとは、異なるステージに進むことになると感じていました。
ウッドベリーは世田谷区・用賀の、スペシャルティコーヒー専門の小さなロースターからスタートしました。そのため、これまでお店を訪れてくださる方の多くは「コーヒー好き」の方々。しかし、百貨店や商業施設はより幅ひろい層にひらかれた場所です。あらかじめ「ウッドベリーコーヒー」をご存知の方だけでなく、もっと多くの方に私たちを知っていただく必要があります。
そこで、ひと目でウッドベリーだとわかる、シンボリックなロゴをつくろうと考えたのです。

そうはいっても、愛着のあるロゴを新しくすることは、やはり勇気のいることでした。
そもそも旧ロゴは、2021年にブランドのアイデンティティを再定義するのにあわせてつくられた比較的新しいものでもあり、そのことも迷いを大きくした要因のひとつでした。
2012年、創業当初のウッドベリーには、コーヒーチェリーの図案に店名を添えた看板はあったものの、具体的なロゴはありませんでした。くわえて、のちにオープンした代官山店は「Perch by WOODBERRY COFFEE」とべつの店名・ロゴをもち、渋谷店の袖看板はゴシック体で店名を書くのみ。しかも用賀本店の看板にはセリフ体が使われていて──と、マイクロロースターとして歩みを始めて以来、ロゴや看板はすべて自分たちの手づくりだったため、統一感がなかったのです。



そのなかで生まれた旧ロゴは、再定義されたウッドベリーのアイデンティティを凝縮したようなデザインでした。
二本線で描かれた「W」は「真摯に向きあう従業員」と「コーヒーライフを体験する人」の姿を、半円で区分けされた「B」は、コーヒー豆と、ウッドベリーの“Think Globally, Act Locally”というコンセプト(上の小さな半円が「地域」、下の大きな半円が「世界」を意味しています)を表現していました。

それから四年が経ち、ロゴの意味を覚えてくださっているお客さまもいらっしゃるほどには、徐々に世のなかに浸透している実感がありました。
しかし、W と B の文字をベースにしたデザインは、お店の名前を知らない方には伝わりづらい。また、デザイン的にも非対称な箇所が多く、プロダクトづくりの場面で若干の違和感をおぼえることもありました。すなわち、お客さまからみても覚えていただきやすいロゴにはなっていないのではないか、という思いもわずかにあったのです。
さらにいえば、私たちは、より多くのコーヒーを買い付け、生産者を支援するために、スーパーやコンビニなどの一般的な小売店へも商品を届けることを今後の目標としています。百貨店や商業施設への出店から、もっとひらかれた場所に展開していきたい。
そう考えたときに、店名を知らずとも認知できて、ほかの商品のなかに埋もれてしまわないようなロゴやパッケージが必要だと強く感じました。そうした思いから、ロゴのリニューアルに踏み出したのです。


思いをわかちあうパートナー

デザイン会社を決めるにあたって、おおよそ10社ほどとお話をしたと思います。
まずは各社のポートフォリオを拝見し、デザイン的な親和性──たとえば、有機的で自然を感じられるデザインや、華美ではないデザインを得意としていそうか──をみていきました。
もうひとつ、企業としてのスタンスが近しいかどうかも、とても重要視しました。デザインをしていただくにあたって、ブランドのアイデンティティを共有できないことには、本質的な部分ですれ違ってしまうと思ったからです。
そのうえで、一般に流通している食品やプロダクトのパッケージをつくっているかどうかもひとつの基準としました。
小規模だったり作家性が高かったりするデザイン会社のなかにも、ウッドベリーとの親和性が高く、お願いしたいと思える会社もいくつかありました。しかし、限定的な商品のデザインを手がけていることが多かったり、食品の流通プロセスの経験が薄かったりして、いざスーパーに商品を並べられるとなったときにどうしても動きづらくなってしまうだろうと、お断りせざるをえませんでした。
とくに、ロースター/カフェにとってロゴを変えることは、プロダクトデザインをすべて刷新することにつながります。今回はそれだけ規模が大きかったため、組織としてスピーディーに動けるかどうかも重要でした。

最終的には、恵比寿にある「株式会社ヘルメス」というデザイン会社にお願いすることに決めました。
ヘルメスさんには70名近いクリエイターの方が在籍しており、デザインチームをいくつももっています。そのため、デザインの幅もひろく、食品の流通にかんする引き出しも豊富でした。デザインの本質的な部分とビジネス上の実務的な部分の両面で、私たちの希望をデザインしてくれるパートナーとして、ヘルメスさんを選んだのです。


ウッドベリーのアイデンティティ

最初の打ち合わせでは、「コーヒーでより良い世界を作る」を基本コンセプトに、21年に再定義したブランドのアイデンティティやキーカラーなど、私たちウッドベリーコーヒーの理念を細かくお伝えしました。

第一に、「コーヒーをとおして素直で偽りのない味と体験を提供し、日々、探究心と思いやりをもち、至極のコーヒーライフを提案しつづける」という、ブラ ンドのストーリー。

第二に、ウッドベリーコーヒーらしさを表す三つの DNA ──「SINCERITY( 誠意・真摯・正直で偽りのないもの)」「HOSPITALITY(おもてなし・思いやり・利他精神)」「EXPLORATION(探究・探検・考える・追求する)」。

そして、「コーヒーにかかわるすべての人びとを豊かにする」という目標を実現するために、ヴィジョン(「コーヒーで世界を変える」)やミッション(コーヒーのプロフェッショナルでありつづける)として目指すべき姿を掲げた経営理念。

どれも、日々の営業のなかで大切にしてきたことを見つめ直し、ブランドの物語を探るなかで見いだしたものでした。
いくつもある私たちの理念をどのようにデザインに落としこむのか。ヘルメスさんとしても、まずはその取っかかりや方法を探るために、一度さまざまなアイデア案をつくってくださることになりました。
また、私たちもじつは、その段階になっても旧ロゴを完全になくしてしまうかどうかの決断がついていませんでした。
そのため、新しいロゴはできるだけシンボリックなものにしたいという要望とともに、もとのロゴを活かした案もつくっていただけるようお願いしたのです。

そうして最初に届いたデザイン案は、基本案だけで 13種類、さらにマイナーチェンジをくわえたバリエーションも含めると全部で21案に及びました。
そこには、私たちがお願いした旧ロゴを活かしたものから、コーヒーの木やチェリー、人の手や地球を想像させるものなど、幅ひろいデザインが揃っていました。全体の方向性は共通しながらも、ひとつひとつに異なる意味や想いが織りこまれていて、ロゴマークとタイポグラフィ、ブランドカラー、テイクアウトカップのイメージがセットになったデザイン案を見比べていくうちに、私たちの想いや姿勢を丁寧に受けとめてかたちにしてくださったことが伝わってくるようでした。
私たちは、デザイン案を前に、これまでのウッドベリーの歩みと、これから目指す未来の両方に思いを巡らせました。創業当初の看板から旧ロゴ、そして今回のリニューアルに至るまで、ウッドベリーが積み重ねてきた歴史を踏まえながら新しいロゴを選ぶプロセスは、これからのブランドの姿をかたちにする大切な作業でした。

次回は、その選定の過程とパッケージデザインについてお届けします。


オリジナルマガジン”Pneuma”ISSUE42より抜粋

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