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記事: On the Mark : Our Logo's Redesign

On the Mark : Our Logo's Redesign

On the Mark : Our Logo's Redesign

Part02 未来を照らす光 井上 心平

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2012年に用賀のマイクロロースターとして歩みをスタートした私たちウッドベリーコーヒー。昨年9月の玉川髙島屋S.C. 店(以下、二子玉川店) への出店を皮切りに、よりひらかれた場所へ踏み出したい。そんな想いから、ロゴとプロダクトデザインを一新することにしました。
先月のコラムでは、リニューアルに至った経緯と、21年にブランドを再定義した際に誕生した旧ロゴマークについてお伝えしました。
新しく私たちのもとに届いたデザイン案を前に、私たちは、これまでの歩みとこれからの未来、その両方に思いを巡らせることになったのです。

子どもにも描けるデザイン

私たちの希望は、ひと目でウッドベリーだとわかるシンボリックなロゴをつくること。そして、スーパーやコンビニに商品を届けられるようになったとき、埋もれないデザインにすることでした。
そのために、デザイン案をみてまず思ったのは、既視感のあるロゴにはしたくないということでした。コーヒーをモチーフにしたデザインは、どうしても国内外のコーヒーショップや関連団体などのロゴと近くなってしまう。くわえて、私たちがそうだったように、マイクロロースターとして出発したお店は自分たちでデザインまで手がけていることが多いのも、似通ってしまう理由のひとつでしょう。せっかくロゴをリニューアルするのであれば、新しさを感じられるデザインにしたかったのです。

ウッドベリーでは、大きな決定をするときほど、みんなで考えて決めるのが昔からのやり方です。そのため、今回もアルバイトも含めた全員から意見を募ることにしました。
デザインを直感的にみる人もいれば、コンセプトや意味づけを重視する人も。なかには、デザインの応用力や実務面まで踏みこんで考えてくれる人もいました。それぞれの捉え方が、その人のイメージに合っていたり、意外に感じたり──規模が大きくなるにつれて、深い面識のないスタッフも増えてきたので、ひとりひとりの人柄に触れられたのは、個人的に嬉しい副産物でした。

そして、やはり意見がわかれたのは「旧ロゴを残すかどうか」という点でした。
前回も書いたように、デザインづくりを進めていた私たちオフィススタッフのなかでも決断がつかず、候補には旧ロゴを活かしたデザイン案も含まれていたのです。結果的にどちらかの意見に大きく偏ることはなく、票を多く集めた案も、私たちと共通していました。
そこで、もっとも票の集まった3案のうち、他団体のロゴと似ていたものを除いた2案──旧ロゴを活かしたものをA案、現在のロゴになったものをB案とします──に絞って、ブラッシュアップすることに。その段階で、あるひとつのテーマが浮かびあがってきました。

「子どもでも描けるようなデザインにしたい」。

どんな人にも認知してもらえるシンボリックなロゴを目指すうえで、これほどしっくりくる指標はありませんでした。
子育て中の社長だからこそ、自然と導かれたテーマだったのかもしれませんが、そう考えたときに、私たちの旧ロゴのように、文字をベースにしたデザインは子どもにはわかりづらいのではないか?と思うようになりました。そのうえ、A案はコーヒーチェリーのなかに旧ロゴが配置されており、子どもが描くのは難しい。新しいテーマがもちあがったことでようやく、ここまで引き延ばしてきた「旧ロゴを残さず、一新する」という決断に踏み切ることができたのです。

そして、ヘルメスさん(デザイン会社)に意見を伝え、ブラッシュアップしていただいた2案は、どちらもとても魅力的なデザインに仕上がっていました。

旧ロゴの要素を取り除き、再デザインしていただいたA案は、3粒のコーヒーチェリーに「SINCERITY(誠意)」「HOSPITALITY(おもてなし)」「EXPLORATION(探究心)」の 3 つのDNAを込めたロゴデザイン。
B案は、「W」の文字を変形して葉のかたちを模した図柄をつなぎあわせる基本形はそのままに、葉の部分の色塗りや細部の形状を細かく変えたパターンをいくつか出していただきました。
正直にいえば、最終決定は感性に従った部分のほうが大きかったかもしれません。それぞれのロゴを切り取ってプロダクトに貼ってみたり、お店の袖看板に配置したイメージ図をみて、「これだ」と直感的に思ったのが、B案だったのです。

たとえばA案は、コーヒーの果実=ベリーをモチーフとしていたため、ウッドベリーの名前を連想しやすく、赤と緑の色使いも印象的でした。意味づけとしても、ウッドベリーのDNAが凝縮されていて、わかりやすい。いま考えても、なくすには惜しいアイデアでした。
いっぽう、B案は最初にいただいた候補のなかでもいちばんシンプルなデザイン案でした。当初は、葉の内側に生まれる光の図形に凹凸がありました。そこを削ぎ落として簡略化したデザインをいただいて、最終形だと感じたのです。これなら、子どもが描くときにも、中心にひし形を描いて、葉を4枚つけるだけでよい。なおかつ、「光」のモチーフがより際立ち、伝わりやすい。新しいロゴには「木漏れ日を浴びながら穏やかな時間を過ごすような憩いの場を提供したい。そして、コーヒーで世界を明るく照らしたい」という想いが込められています。ウッドベリーのDNAとしての、誠意やあたたかさ、自然環境を大切にする気持ちは「木漏れ日」や「葉」のイメージに、プロフェッショナリズムは洗練されたデザインにしっかり反映されている。新たにウッドベリーの顔となるのにふさわしいロゴだと思いました。

暮らしに溶けこむパッケージ

ロゴとあわせて、コーヒー豆のパッケージもリニューアルしました。
まず私たちが最優先に考えたのは、環境負荷の低いパッケージにすること。
じつは完全にリサイクルできるパッケージというのは意外と難しいのです。従来のクラフト地の袋も内側にアルミが蒸着されており、捨てるしかありませんでした。そこで、まずはガス抜き用のバルブも含めて100%リサイクルできる素材でつくり、各自治体で資源ゴミとして出せる設計にすることに決めました。
しかし、農園やコーヒーの情報を記載したinfoカードのシステムも残したい。カードを差しこめるスリーブの機能をもったシールを貼りつける方法が一般的ですが、そうすると今度はリサイクルができなくなってしまいます。

どうにかリサイクル素材とinfoカードを両立する方法はないものかと思案していたときに出会ったのが、今回のパッケージをつくっているMTPAK COFFEEさんでした。MTPAKさんは、おそらく国内で唯一、フィルムの一層目に切り込みを入れたパッケージをつくる技術をもった企業でした。シールを使わずにカードを差しこめるためゴミを増やすさず、なおかつ、「低密度ポリエチレン」といわれる100%リサイクルフィルムでつくられている。まさに、私たちの理想的なかたちでした。

デザイン面では、焙煎度によって袋の色合いを変えたいと思っていました。たとえば北欧のフグレンコーヒーのように、銘柄ごとにアーティストが一点ずつ描いたイラストをパッケージに載せる方法も魅力的でしたが、人が変わるだけで継続できなくなってしまうので私たちには難しい。できるだけ人に依存せず、それでいて棚に並んだときにパッと見て違いが伝わるように、焙煎度ごとにわけることにしたのです。
当初は、ビビッドな色で明確に色わけする案もありましたが、最終的にはグリーン系のグラデーションで表現することにしました。デザインのイメージとして参考にしたのが、同じく北欧のロースターであるCoffee Collectiveのパッケージ。三角形のモチーフのグラデーションで構成されたデザインは、新しくロゴをパターン化してつくった柄の使い方を考えるうえでも、感覚的に近いものでした。
グラデーションの色味は、派手すぎず、生活に自然と馴染むように意識しました。すくない内容量でも自立するため、自宅に並べておいてもオシャレにみえるのではないかと思います。新しいパッケージとともに、私たちのロゴがみなさんの暮らしに溶けこんでいってくれたら嬉しいなと思っています。


明るい未来

新しいロゴとパッケージの正式発表は、昨年9月のSCAJと二子玉川店のオープンのタイミングでしたが、私にとってもっとも実感が湧いたのは、オープン前の二子玉川店の仮囲いに新ロゴが大きく掲げられたときでした。格式高い百貨店である髙島屋の、しかも入り口の目の前に私たちのロゴがある。それをみて、ウッドベリーが生まれ変わるんだと、嬉しさがこみ上げてきました。

百貨店への出店と、ロゴとパッケージのリニューアル。今回、私たちは「マイクロロースター的なクラフトマンシップを失わずに、どこまで間口をひろげられるか」ということを、これまで以上に深く考えました。というのも、これまでのウッドベリーらしいクラフト感のある雰囲気は、百貨店の空間とはすこし距離のあるものだったからです。だからといってスペシャルティコーヒーの精神や本質を手放したと受けとられたくはない。
それでも、私たちが目指しているのは高品質なコーヒーをより多くの人に届けることです。コアな世界に閉じこもるのではなく、こだわりを貫きながらも誰もが楽しめる文化として根づかせたい。ひらかれた場所に届けようとしなければ、ひろがっていかないものもあると思うのです。そのバランスをどのように保っていくのかは、ウッドベリーがつねに自ら問いかけてきたテーマでもあります。

じつは、ウッドベリーのように個人の小さなロースターから始まった店が、独立資本のまま、ここまで規模をひろげている例はほとんどありません。とくに二子玉川店のオープンは、日本のサードウェーブコーヒーのひとつの転換点ともいえるできごとだと自負するとともに、業界の先達からも同様の言葉をかけていただきました。また、私がコーヒーを始めたころに知り合い、いまはお店を構えている方と話していると、「ウッドベリーにできなかったら、うちには無理だよ」と言われることもあります。自分たちで焙煎しているお店でもここまでできるのだ、と示せているのであれば、僭越ながらも、ほかのロースターにとっての励みになれているのかもしれません。そうした存在でありつづけたい、という想いが強くあります。

そう考えると、新しいロゴが「コーヒーで世界を明るく照らす」という意味を宿し、中央に「光」を抱いていることは、とても象徴的に感じられます。日本のコーヒー業界にとっても前向きなメッセージを発信できる存在を目指しながら、「コーヒーをとおしてよりよい世界をつくる」ための「光」となれるように。このロゴとともに、また新たな道のりを歩んでいきたいと思っています。

オリジナルマガジン”Pneuma”ISSUE43より抜粋

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