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記事: Premium Coffee : The best experience with the highest quality coffee.

Premium Coffee : The best experience with the highest quality coffee.

Premium Coffee : The best experience with the highest quality coffee.

Part02 “類い希なる体験を求めて(+パナマレポート) 佐藤 優貴

今年から、ウッドベリー全店舗で特別なコーヒーを特別なレシピで淹れる「プレミアム」コーヒーの提供を新たに開始し、定期便のラインナップにも「暮らしを彩るプレミアム定期便」を加えました。

「プレミアム」で取り扱うのは、世界的な有名農園や、オークションロットなどの、いわゆる「高級コーヒー」が中心です。前回は、高級化の背景やラインナップの基準など、全般的なお話をお届けしましたが、今月はウッドベリーの「プレミアム」について、もうすこし具体的に踏みこんだ内容をお伝えします。

あわせて、パナマでじっさいに目にした、トップクオリティのコーヒーが生まれる現地のレポートもお届けします。

特別な豆を、特別な仕方で

「プレミアム」では、希少価値の高い最高品質の豆を使用するだけでなく、その味わいを最大限活かすために焙煎や抽出も特別な方法でおこなっています。

焙煎は、私たちがふだん使用している「ローリング(Loring S35 Kestrel)」という大型の焙煎機ではなく、「ストロングホールド(Stronghold S7X)」という最新式の焙煎機を使用しています。焙煎の世界大会の大会機としても使用されるストロングホールドは、焙煎にかかわる3つの熱源(対流熱・伝導熱・放射熱)を個別にコントロールでき、より緻密な味づくりが可能です。また、数百グラムの少量から焙煎ができ、試作の回数を増やせることも焙煎のクオリティの向上に大きく役立ちます。

じつは「プレミアム」で扱うコーヒーのように味がユニークなものは、物理的な豆の特性もユニークで焙煎の難易度が高いことがよくあります。基本的に高標高で栽培されているため、生豆の密度が高く豆の内部まで火がとおりにくかったり、発酵をくわえたものは焦げやすかったりもします。たとえば、先月から販売開始した「エチオピア/タミル・タデッセ TOMODACHI」は生豆がとくに小粒で、焦がさないように火をとおすのがさらに困難でした。ふだん以上に豆の特性にあわせた焙煎が求められますが、適切に焼けたときには綺麗でわかりやすい味に仕上がるため、感動はひとしおです。

抽出は、「カスタムウォーター」とフラットタイプのKalita Wave ドリッパーを使用しています。カスタムウォーターとは、純水に微量のミネラルやイオンを添加することでコーヒーの味わいを調整する、競技会でもよく使われる手法です。「プレミアム」のコーヒーでは、酸/フレーバーの明確さを引きだすためにマグネシウムを、質感や甘さの余韻を延ばすためにカルシウムをくわえています(それだけだとph が下がりすぎるため、少量のph緩衝剤で整えています)。

忘れがちなことですが、一杯のコーヒーに溶けているコーヒーの成分は1.5% 前後といれ、98% は水でできています。しかし「水」にはじつは雑味が多く含まれており、それがコーヒーのフレーバーを阻害してしまいます。とくに「プレミアム」で扱うような雑味のないコーヒーでは、余計に水道水とカスタムウォーターのちがいが際立ちます。さらに、水道水は各店舗で異なるため、味を統一する意味もあります。

また、「プレミアム」では、抽出の技術もこれまで以上に求められます。しかし、高級なコーヒーを取り扱っているからといって、一部の店舗に限定していては買付量を増やすことができず、前回お伝えした「農園への還元」につなげることができません。焙煎と抽出をとおして、全店舗で同じクオリティのものを提供することは、農園から届いたコーヒーを前に、私たちがチャレンジしつづけなければいけないことでもあります。


パナマの歴史とテロワール

今年の3 月に、高級コーヒーの産地としてとくに有名なパナマを訪れ、エスメラルダ農園やエリダ農園などの有名農園を含む、6 銘柄を買いつけることができました。生産量がすくなく現地でなければ出会えなかったようなロットに出会えたり、ひとつの農園のゲイシャ種だけでも20 種類近くをカッピングできたのは、日本で得ることのできない体験でした。

北米大陸と南米大陸を結ぶ地峡にあり、太平洋・大西洋間の距離が最も狭まる場所にあるパナマは、1914 年に完成したパナマ運河が象徴するように、スペインによって「発見」された16 世紀から流通や交通の重要ルートとして発展した歴史があります。そのためグローバルな風土をもち、これまで私が訪れた生産国のなかでもとくに豊かな国だと感じました。他国では現地住民が伝統的にコーヒーを栽培していることがほとんどですが、パナマはアメリカ系移民が始めた農園が多く、新しいプロセスや品種に積極的にチャレンジする姿勢と、それを実現するための知識や資本を潤沢にもっている農園が多いのが特徴です(エリダ農園などを経営するラマスタスさんご家族のように、先祖代々受け継がれている農園も存在しますが、多くはありません)。



パナマはバル火山を中心として、東側にボケテ、西側にヴォルカンという主要な生産地域があります。ボケテのほうが整備されたワイナリーのような有名農園が多いエリアで、いっぽうヴォルカンは山道を登ってゆくような、いわゆる一般的なコーヒー農園が多い印象です。

おもしろいのは、バル火山の西側と東側でテロワールが大きく異なることです。バル火山周辺は北米大陸のロッキー山脈から吹く冷たい風と、太平洋から上昇する暖かい風がぶつかりあい、雲が途切れることなく発生します。そのうえで、火山の東西に位置するボケテとヴォルカンは、それぞれ大西洋と太平洋の影響を受け、雨の降り方が異なります。

とくに大西洋側の影響を受けるボケテでは「バハレケ」と呼ばれる霧状の雨がつねに降っているのが特徴です。じつはボケテは、後述するヴォルカンと比較すると土壌の栄養分がすくなく、味の強度を蓄えにくい土地でもあるのですが、バハレケの影響で湿潤な環境をもち、ゲイシャが甘さを蓄えるには適しています。その環境と整備された設備によるプロセスがかけあわさって、繊細でエレガントな唯一無二の味わいが生まれるのです。

いっぽうヴォルカンは、土壌が非常に強く、育っているすべての植物がパワフルにみえるような地域でした。バハレケは降らないものの、湿度は高く、至るところでシダ系植物が巨大に育っています。通常、標高が高くなればなるほど植物は減ってゆきますが、ヴォルカンは標高2,000m を越えても風景が変わらないことには驚きました。その土壌のちがいはコーヒーの味にもあらわれており、ヴォルカンのコーヒーはより明確で力強い味わいをしています。


二つの感動的な体験

ボケテでは毎日のように雨が降るため、屋外ではチェリーの乾燥がほとんどできず、機械乾燥か、もしく湿度や気温を管理した室内での乾燥が主となります(そのことがワイナリーのように整備された農園が多い理由のひとつでもあるでしょう)。ただ、乾燥ルームに入れられる量は限られるため、基本的にはオークションやコンペティション用のロットだけで、通常ラインのゲイシャなどは機械乾燥で一気に乾かしてしまうこともあります。

とりわけ印象的だったのは「ロスト・オリジン」という革新的なプロセス工場でした。まず、パルパー(果肉を剥く機械)や発酵タンクは使用する前後で必ず滅菌処理をおこない、乾燥は温度・湿度・風量を管理した3 つの乾燥ルームで段階的におこなわれます。そして、最終的にハンドピックマシーンで画像処理によってひと粒ずつ自動的に選別されます。最先端の技術でプロセスされたロスト・オリジンのコーヒーは、私ですら「これがコーヒーなのか?」と衝撃を受けるほど綺麗な味わいをしていました。かつて、フルーツジュースのようなコーヒーに抱いた「コーヒーとはなんなのか?」とい う疑問を、8年経って更新する体験をするとは思いもしませんでした。

いっぽうヴォルカン地域、パナマ西部のコスタリカとの国境近くにあるヌグオ農園では、ロスト・オリジンとは正反対の、昔ながらの手回し式のパルパーでプロセスをおこなっていたことに感動しました。ヌグオ農園は有名で価格も高価なため、これまで購入を見送らざるをえなかったのですが、大量生産とはかけ離れた方法で少量のロットをひとつひとつ手作業でつくる生産者の姿は、買わなければいけない農園だと想いを新たにするほど、心が動かされる光景でした。


本質が宿るコーヒー

いまウッドベリーで「プレミアム」として扱っている銘柄は6種類あります。売り切れたものから順次切り替えてゆく予定で、現状でも20種類近い銘柄をストックしています。

トップクオリティのコーヒーを知るきっかけは、各国のスペシャルティコーヒー品評会「Cup of Excellence」(COE)が中心です。興味深いのは、COE受賞銘柄のブラインドカッピングを何年かつづけるうちに、ひとつの国のなかでとくに好きな地域や品種、その組み合わせを知識として得られるどころか、毎年同じ農園のコーヒーが好きだということに気がつくことです。

毎年、コーヒーの味は確実に変化しています。それでもなお美味しいと感じる農園が変わらないのは、トップクオリティのコーヒーには農園の本質のようなものが宿っているからだと思います。それは生産者の技術やテロワール(あるいはその両者)によるものかもしれませんが、いずれにしても毎年美味しいと感じられるのは稀有なことです。というのも、美味しいかどうかの基準は年々上がりつづけるもので、今年美味しいと感じても来年にはそれがふつうになるからです。スペシャルティコーヒー、とくに「高級コーヒー」の世界における品質向上のスピード感はそれほど眼を瞠るものがあります。

だから、毎年美味しいと思えることは、それだけ品質が上がっていることの証でもあります。コーヒーの味から農園の努力がはっきりみえることは、何よりもポジティブな買付理由にもなります。ここではひとつひとつの銘柄について細かくご説明することは叶いませんでしたが、「プレミアム」にはそうしたコーヒーばかりが揃っています。

そして、どれも人生で一度は体験してみる価値のあるコーヒーであることは間違いありません。ぜひ店頭などでお楽しみいただければ嬉しいです。

オリジナルマガジン”Pneuma”ISSUE36より抜粋

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