ホンジュラス レムス農園 パライネマ

ホンジュラス西部が育んだ、注目のスペシャルティコーヒー

火山性の土壌と豊かな自然に恵まれたホンジュラスは、グアテマラやエルサルバドルと国境を接する中米の国。スペシャルティコーヒーの生産国としてはまだあまり知られていませんが、実は高地の冷涼な気候や複雑な地形が織りなす環境の中で、精緻で個性豊かなコーヒーが育まれています。中でも西部・コパン県のカプカス地域は、その優れたテロワールにより、繊細で奥行きのある風味を持つコーヒーが生まれる場所として注目されています。

このロットは、標高1,600メートルに位置するレムス農園で生産されたParainema（パライネマ）品種。森林と渓谷に囲まれたミクロクライメットの中で育ったこのコーヒーは、シトラスを思わせる明るく伸びやかな酸と、ブラウンシュガーのようなやさしい甘みが見事に調和しています。
Project Origin が現地パートナーを通じて直接買い付けたこのロットは、トレーサビリティの確かなダイレクトトレードによって届けられており、生産者の想いや風土の魅力がまっすぐに伝わってくる、誠実な一杯に仕上がっています。

感じられるフレーバー

家族の記憶が息づく、レムス農園の営み

レムス農園を率いるダニロ・レムス氏にとって、コーヒーづくりは単なる農業ではなく、家族の歴史そのものです。彼の記憶には、祖父母や両親が一本一本の木を丁寧に手入れし、大地と向き合ってきた姿が深く刻まれており、その精神は今も農園の隅々にまで息づいています。ダニロ氏は「コーヒーは生活の糧であると同時に、家族の誇り」と語ります。その言葉通り、農園での作業はどれも真摯で丁寧です。

収穫は毎年1月から4月にかけて行われ、チェリーが完熟するタイミングを見極めながら、一粒一粒を手で摘み取ります。収穫されたチェリーはその日のうちに処理され、選別、発酵、乾燥、保管までのすべてを農園内で完結。細部まで管理の行き届いたプロセスが、クリーンで安定したカップクオリティを支えています。
こうした日々の積み重ねが、味わいの透明感と香味の奥行きにそのまま現れているのです。

急峻な山と渓谷が生み出す、唯一無二のテロワール

レムス農園が位置するカプカス地域は、ホンジュラスでも特に標高差の大きな山岳地帯です。標高1,600メートルの農園は、急な斜面と深い渓谷に囲まれ、森から吹き抜ける冷涼な風と谷間から立ち上る湿気が混ざり合い、複雑で変化に富んだミクロクライメットを形成しています。加えてこの地域は、風化した火山性土壌に覆われており、有機物やミネラルを豊富に含みつつも、水はけと保湿性のバランスに優れています。

日中と夜間の大きな寒暖差は、チェリーの成熟をゆっくりと進め、甘さと酸味が美しく調和した果実を育みます。また、畑の斜面ごとに異なる気象条件が、風味にさらなる立体感を与えています。これらの自然条件が、パライネマの持つ潜在的な香味を引き出し、レムス農園ならではの複雑でクリーンな味わいをかたちづくっているのです。

Parainema──耐病性と香味を兼ね備えた革新的な品種

パライネマは、ホンジュラスのコーヒー研究機関であるIHCAFE（ホンジュラス・コーヒー協会）によって開発された品種で、サルチモール系の交配により高い病害耐性と高品質なカップクオリティを両立することを目的に育成されました。その名は、開発中の交配グループに付けられたコードネームに由来しています。

この品種は、栽培条件によって香味表現が大きく変化しますが、レムス農園のようにミクロクライメットに富んだ高地では、パライネマのポテンシャルが最大限に発揮されます。シトラスを思わせる明るくみずみずしい酸、ジャスミンやライムフラワーのような華やかで繊細なアロマ、そしてブラウンシュガーのようなまろやかで心地よい甘み。どの温度帯でも崩れることのない、整った味わいの構造は、まさにスペシャルティコーヒーの理想を体現するような存在です。

精密に整えられたプロセスがもたらす透明感と調和

レムス農園では、パライネマの特性を最大限に引き出すため、ウォッシュドプロセスを採用しています。
収穫されたチェリーはその日のうちに処理場へと運ばれ、浮力を利用した比重選別により未成熟果や欠陥豆を取り除いた後、果肉を除去（パルピング）し、コンクリートタンクでおよそ24時間の自然発酵を経てミュシレージ（内果皮の間にある粘液質）を分解します。

発酵後は、清流を使ってパーチメントを丁寧に洗浄し、アフリカンベッドで20日以上かけてゆっくりと自然乾燥されます。乾燥には山から吹き抜ける冷風と、季節的に安定した日射が活かされており、水分値が10〜12%に達したところで、パーチメントのまま保管。出荷直前に脱殻と最終選別を行うことで、風味の鮮度と均質性を維持しています。
この一貫した管理体制と環境の調和が、パライネマの澄んだ香味構造と美しい後味を支えているのです。

ホンジュラスのテロワールと、ダニロ・レムス氏の経験と技術。それらが重なり合うことで生まれたこのコーヒーは、単なる商品ではなく、生産者の想いと自然の恵みが結晶した “味わいの物語” です。ぜひ、読み解くようにご堪能ください。

【生産国】ホンジュラス
【地域】コパン県カプカス地区
【農園】レムス農園
【生産者】ダニロ・レムス
【標高】1,600m
【品種】パライネマ
【プロセス】ウォッシュド
【焙煎度】浅煎り

Country：Honduras
Region：Capucas,Copán
Farm：Lemus
Producer：Danilo Lemus
Altitude：1,600m
Varietals：Parainema
Process：Washed
Rost Level：Light Roast