記事: HARIO V60 MUGEN(陶器)- GUATEMALA EL COLORIDO

HARIO V60 MUGEN(陶器)- GUATEMALA EL COLORIDO
グアテマラ/エル・コロリド、ラクティック・ナチュラルがもつシロッピーな質感を引き出しながら、美しい酸味を抽出することをテーマにレシピを組みました。
使用するのは陶器製の HARIO V60 MUGEN。まず、全体をとおして低めの湯温を用いることで、酸の印象の明確化と阻害要因の減少を狙っています。ただし、それによって質感が引き出しにくくなるため、リブがなくチャネリングが起こりづらいV60 MUGEN を選択し、なおかつ総熱容量が高く熱伝導率の低い陶器製のドリッパーをじゅうぶんに温めてから使用しています。MUGEN のゆっくりなフローダウンのあいだ陶器の保温性が効果的にはたらき、抽出後半の温度低下を防ぐことができるため、低めの湯温でもシロッピーな質感を実現することができます。
また、抽出の工夫としては、蒸らしをおこなってから、もっとも甘さが引き出される一分のタイミングで残りのお湯をすべて注ぎ、ドリッパー内でタービュランス(乱流)を起こすことで成分をしっかり引き出します。抽出比率をやや低めに(=濃度を濃く)設定しながらも、注湯のタイミングを一分に絞ることで、明確で立体的な酸が際立ち、奥行きのある味わいが生まれます。
カップからは赤みを帯びたフローラルな香りが立ち上がり、口に含むと黄色いトロピカルフルーツのような明るい酸がひろがります。時間の経過とともに、ブラウンシュガーやチョコレートのような甘さへと変化し、豊かで奥行きのある味わいをお楽しみいただけます。

使用器具:HARIO V60 MUGEN(陶器)
粉量 / 粒度:17g / 中粗挽き (TIMEMORE C3S 22クリック)
湯温 / 湯量:88°C / 240 g (白神山地の水)
時間 - 総湯量 (注湯量)
0 : 00 - 60g (60g)
1 : 00 - 240g (180g)
4 : 30 - (落ちきり)(-)

私たちの情熱が詰まった自社農園、エル・コロリドのコーヒー豆が今年も届きました。
エル・コロリドは、GOOD COFFEE FARMS との「My Farms 契約」プロジェクトから生まれたコーヒーです。今年で四年目を迎えたこのプロジェクトは、GOOD COFFEE FARMS 所属農園の一区画をお借りし、栽培・収穫・生産処理までを現地と協働しておこなうものです。この取り組みにより、農園は契約年数分の安定した収入を得られ、私たちは収穫から生産処理まで細部にこだわった“ウッドベリーでしか味わえない”特別なコーヒーロットをお届けできます。
エル・コロリドは、グアテマラ東部ニューオリエンテ地方・コリス県ハラパにあるナランハレス農園(標高1,535 ~ 1,640m)でつくられています。
ニューオリエンテでコーヒー栽培が始まったのは1950年代。標高が高く急斜面が多いため、当初はコーヒー栽培に不向きとされていましたが、近年のスペシャルティコーヒー需要の高まりとともに、その恵まれた土壌と気候から高品質なコーヒーを生み出す地域として注目されるようになりました。
この地域はかつて火山地帯であったことから変成岩や軽石を含む石灰岩質の土壌をもち、火山活動が活発な地域とは異なるユニークな環境です。そうしたテロワールからは、トロピカルフルーツやアーモンド、ブラウンシュガーの印象が生まれます。

今回ご紹介するのは、ラクティック・ファーメンテーション・ナチュラル(Lactic Fermentation Natural)。 発酵タンク内にコーヒーチェリーとともに塩を加え、乳酸菌が優位となる環境をつくることで、一般的なナチュラル・プロセス以上にマウスフィールの向上が望めるオリジナルの手法です。昨年初めておこなったこのプロセスに、今年、新たな工夫を施したポイントがふたつあります。
ひとつめは、発酵時のpHを3.5とや や強めの酸性にすることで、より明確な酸味の形成を目指しました。じつは昨年もこの数値を目標としたものの、気温の低さで発酵が思いどおりに進まず、pH3.8にとどまってしまいました。そこで、今年は収穫期のなかでもとくに暖かい時期を選び、タンク内温度を 40℃に維持。日照を利用せずとも温度を安定させることができ、昼夜の寒暖差も穏やかだったため、順調に発酵が進み、無事にpH3.5を達成しました。
ふたつめのポイントは、天日乾燥の導入です。pH3.5に到達後は、好気性発酵にするためタンク内に酸素を含めるように底まで攪拌・発酵させます。その後、陰干し工程にうつる前に三日間の天日乾燥を実施することにしたのです。陰干しは乾燥時の温度を低く保ち、ゆるやかに乾燥を進めることで発酵で生まれた繊細な香りを逃さずに仕上げられるいっぽう、乾燥期間が長くなりカビのリスクが生じます。そこで、天日乾燥を先に取り入れ、乾燥初期の水分を効果的に減らし、よりクリーンな味わいを目指しました。
こうしてできあがったコーヒーは、昨年同様に赤い花や果実のアロマをもちながら、今年は黄色いトロピカルフルーツのような明るい酸味が際立っています。

ところで、ナランハラス農園では病害虫やサビ病の被害を抑えるために、高い病害虫耐性を兼ね備えたカティシック品種の活用や、自家製のオーガニック肥料の作成を進めています。今年農園を訪れた際にも、サビ病の発生が減少しているという嬉しい報告を受けました。
しかし、今年は気候変動の影響で雨が多く収穫量が少なかったといいます。厳しい環境のなかでも、変わらず高いクオリティのコーヒーを栽培してくれた生産者の皆さんに、心から感謝しています。








