記事: FRENCH PRESS - GUATEMALA EL COLORIDO FERMENTED HONEY

FRENCH PRESS - GUATEMALA EL COLORIDO FERMENTED HONEY
今回のエル・コロリド/ファーメンテッド・ハニーは、甘さの層の深さと、酸のやわらかな立ち上がりがとても魅力的でした。その良さを素直に感じられるように、フレンチプレスを使用したシンプルなレシピ構成で、豊かな甘さをしっかり引き出しながら、酸で奥行きを添えるレシピを組んでみました。複雑にしすぎず、でも単調にならないように。フレーバーがゆっくりとひらいていく過程を楽しめるような、そんな一杯を目指しました。
レシピ自体はシンプルですが、ポイントは撹拌のタイミング。抽出の早い段階で軽 く撹拌することで、酸の印象が立ち上がり、甘さとのコントラストがよりはっきりと感じられるようになります。飲み進めるたびに表情を変えるこの一杯を、ぜひご自身でも試してみてください。

使用器具:French Press
粉量 / 粒度:16g / 細挽き (TIMEMORE C3S 13クリック)
湯温 / 湯量:90°C / 240 g (白神山地の水)
0 : 00 - お湯を240g注ぐ。
*フレンチプレスのサーバーを持ち、回しながらお湯を注ぎ、しっかりとお湯を行き渡らせる。3 : 00 - スプーンで攪拌
*表面にできたコーヒー粉の層を崩して沈めるイメージで攪拌する。4 : 00 - プランジャーを下ろす
今月ご紹介するのはグアテマラ/ナランハレス農園で生産している自社ブランド豆「エル・コロリド」のファーメンテッド・ハニーです。
今年の 2 月にご紹介したラクティック・ナチュラル同様、ファーメンテッド・ハニーも新しい発酵プロセスに挑戦した銘柄です。
ラクティック・ナチュラルでは、ナチュラル・プロセスの特徴を活かすことに焦点をあてて発酵をおこないましたが、今回のファーメンテッド・ハニーでは、嫌気性発酵の特性のひとつであるフェノール類の抽出をテーマにプロセスをおこないました。
具体的には、コーヒーチェリーの果肉を取り除いたあと、タンクの低層にカスカラ(皮と果肉の部分)を敷きつめ、そのうえにミューシレージ(種子を覆う粘液質)をまとったコーヒーを重ねるという二層構造を構築しました。この配置によって、カスカラにふくまれるポリフェノールやアントシアニンなどの成分がじっくりと抽出され、それらをたっぷりとふくんだモスト(発酵液)が上層のコーヒーに浸透してゆく設計です。
また、ハニー・プロセスは、ウォッシュド・プロセスと比較すると酸の印象が弱くなりがちです。その課題を乗り越えるために、嫌気状態での発酵時間を十分に確保することで、乳酸や酢酸などの有機酸生成を高める工夫を施しました。ただし、発酵を長くしすぎると、酪酸やメタノール系の不要発酵(絶嫌気性発酵)が進行するリスクもあります。そのため、プロセスの後半ではタンクに酸素を取りこみ、発酵の制御と酸の表現のバランスをとりました。
じっさいのプロセスでは、嫌気状態で72 時間、その後酸素を加えながら pHが 3.8 に下がるまで発酵をおこないました。そうしてできあがったファーメンテッド・ハニー・プロセスのロットは、レモングラスや白ワインを思わせるフレッシュで華やかなフレーバーに、リンゴのような甘い酸、ブラウンシュガーのような穏やかな甘さを感じられるフレッシュ・スイートな印象のコーヒーに仕上がりました。