記事: BEANDY Silk Dripper - GUATEMALA ROSMA

BEANDY Silk Dripper - GUATEMALA ROSMA
グアテマラ/ロスマ農園のもつレモンや洋梨のような明るい酸を引き出し、ブラウンシュガーのような厚みのある甘さが下支えする立体的なカップバランスを目指してレシピを組みました。
今回、使用するのはBEANDYシルクドリッパー。高い透過性をもち、薄く均一な粉層をつくれる形状を活かし、クリーンかつ力強い甘さを引き出します。まず、蒸らしをおこなったあと、2投目で一気にお湯を100g注ぎ、成分の移動速度を上げます。雑味が混じる前に、スピード感をもって明るい酸の成分を取りだすことで、味の明るさのピークを決定づけます。
そして、3投目に移る前に長めの間隔を置くことが、今回のレシピの重要なポイントです。酸の抽出を一度静止させ、粉の内部で甘さが溶けだすのを待ちます。仕上げとなる3投目は、濃度勾配を利用して、準備された甘さを一気にカップへと回収します。高い透過性のおかげで、終盤の注湯量を増やしても抽出時間が過度に伸びないため、エグみが出る前にクリーンな状態で抽出を完結させることができます。
そうしてできあがった一杯は、温かいときはレモンや洋梨の明るい酸が先行し、際立った明るさを感じることができます。そして、温度が下がるにつれハーブの清涼感やブラウンシュガーのニュアンスが顔を出します。後半にしっかり甘さを確保するレシピにすることで、冷めても味わいが崩れず、長い余韻が続きます。


Origin
近年のコーヒーマーケットは、かつてないほど品質のレンジがひろがり、多様な個性が許容されるようになりました。生産効率の追求やインパクトを重視した新しい味づくりなど、選択肢がひろがること自体は、業界の勢いを感じさせる変化だと思っています。
ただ、そんな豊かな多様性のなかで、私が一貫して惹かれ、求めつづけているものがあります。それは、品種とテロワールが呼応し、高い次元で安定している状態を感じられるような体験です。
かつてエチオピアの森で無限のグラデーションをみせていた野生種は、イエメンの過酷な環境を経て、ティピカやブルボンという栽培種へと変異しました。野生種がもっていた複雑な香りを削ぎ落とし、いかなる土地でも崩れない強さと再現性を手に入れる、いわば野生から農作物へのパラダイムシフトでした。
エチオピアからイエメンへ、そして世界へ。コーヒーが海を渡るたび、その場その場で生存のために何を失い、何を得てきたのか。その過酷な変容の跡が見えるような、「生き残るための設計図」が感じられるコーヒーに出会いたい。生き残った先に何を表現するのかみてみたい。そんな探究心の先に出会ったのが、今回のコーヒーでした。
それは、以前から注目し動向を追いつづけてきたグアテマラ/ロスマ農園のカッピングイベントでのことでした。テーブルには、さまざまな品種とプロセスでつくられた個性豊かなカップが並んでいました。そのなかで、このブルボンとティピカでつくられたロットを口にした瞬間、私の内にあった欲求が即座に反応しました。どこか、ひとつの正解を提示されたような感覚を覚えたのです。
そのコーヒーは、ウォッシュド・プロセスが品種の骨格を際立たせ、土地の力強さをそのまま映し出しているようでした。品種とテロワールが互いのポテンシャルを削り合うことなく、高い次元で等しく肩を並べ、純度を保っている。その出来栄えに、すぐに購入を決めました。

ロスマは、ウエウエテナンゴという土地の特性をもっとも色濃く、そして精緻に表現している農園だと感じます。その特異なフレーバーの正体は、石灰岩土壌と地形が生む熱風という、2 つの要因にあります。
高pHの石灰岩土壌は、植物にリンゴ酸を蓄えるサイクルを強制し、ほかにはないキレと輝きをもたらします。さらに、断崖を吹き抜ける熱風が夜間の凍結を防ぎつつ、日中の熱量による酵素反応を加速させます。
熱風が時間を稼ぎ、乾燥が蓄積させ、pHが純度を高めるという環境の連鎖が生む特徴的なフレーバー。それこそが、1963年に初代アレハンドロ・モラレスがこの地に可能性を感じた理由でもあります。伝統品種が本来もつポテンシャルをリンゴ酸へと収束させ、純粋な輝きを放つための条件が、その土地には揃っていたのです。
初代オーナーが土地を購入した際にすでに植えられていた伝統品種は、1980年に現オーナーのフレディ・モラレス氏へと引き継がれました。コーヒー産業の原風景でありながら、いまなお高い再現性と品質を誇る伝統品種と、テロワールが合致したときに生まれる揺るぎない安定感を感じることができます。
歴史という工程を経て、土地と品種の因果をまっすぐに体現した一杯です。時代が求める多様な拡散のなかで生き残った味わいをぜひ感じてみてください。
(佐藤)

Roast
焙煎では、ロスマのもつ、厚みと透明感をともなった甘さを引き立たせることに注力しました。
コーヒーの甘さの印象は、味わいが発達するにつれて「グレイン→キャンディ→チョコレート」の順に変化します。
今回、私はまず透明感のあるキャンディのような甘さを目指して焙煎をスタートしました。しかし、ファーストバッチでは上手に火が入らず、豆の色は進んでいるものの甘さ・フレーバーともに発達しきらない印象になってしまいました。
焙煎においては、ただ火力を上げれば味わいが発達するわけではなく、適切なタイミングで適切なカロリーを当てる必要があります。そのため、セカンドバッチでは、前半に過剰に火が入るのを防ぐために最大火力を抑えめにし、ハゼる前に火力をわずかに落とすことで焦げ付きを防ぐような工夫を施しました。
そうして出来上がったカップは、厚みと透明感を両立した甘さをもち、レモンや洋梨のようなフレーバーも明確に感じられる一杯になりました。
(今川)








