記事: HARIO V60 - TANZANIA ACACIA HILLS GEISHA

HARIO V60 - TANZANIA ACACIA HILLS GEISHA
今回は、タンザニア/アカシア・ヒルズ農園ゲイシャのもつ、華やかなフレーバーと明るい酸のハイライト、雑味のないハチミツのような余韻を目指してレシピを組みました。
ポイントは、それぞれ30秒と短く設定した注湯間隔です。そうすることで抽出の前半において溶けだしやすい有機酸 (シトラス、ホワイトグレープ系) をしっかり引き出すと同時に、ブリューレシオを低く=粉に対する総湯量を制限することで抽出を早めに終え、後半に抽出されやすい重い苦味や雑味を抑えています。
また、抽出の終了時間をコントロールするうえで湯抜けの速さも必須条件となるため、ドリッパーにはHARIO V60を使用し、流速を維持しています。
そうしてできあがったカップは、高温度帯では揮発性の高いフローラルなアロマが鼻腔を抜け、濁りのないシトラスの明るい酸がファーストアタックとして綺麗に立ち上がります。そして温度が下がるにつれ、酸と甘さのバランスが整い、レモンとホワイトグレープを思わせるジューシーな果実味へと表情を変化させます。冷めてもなおバランスは崩れず、クリアな状態が維持されることで、ハチミツのような心地よい甘さの余韻が持続します。ぜひお試しください。


Origin
アフリカの代表的な生産国であるエチオピアやケニアのコーヒーは、ひとくちでそれとわかるほどユニークで官能的なフレーバーをもっています。いっぽうで、スコアのうえでは素晴らしいポテンシャルを示しつつも、強い野性味やキレに悪さのような違和感をおぼえることも多く、クリーンカップにおいて物足りなさを感じることがあります。
だからこそ、特異なフレーバーを生み出すアフリカの土地の力と、最高峰のクリーンカップと風味をもったゲイシャ種を掛けあわせたら、いったいどれほどのコーヒーが生まれるのだろうかと、私は何度も考えたことがあります。しかし現実はそれほど甘くなく、今回ご紹介するタンザニア/アカシア・ヒルズに出会うまで、なかなか満足できる一杯に出会うことはありませんでした。
アカシア・ヒルズ農園のゲイシャは、まさしく私が期待していたような「アフリカ」と「ゲイシャ」のコンビネーションが感じられるコーヒーです。
最初に鼻腔を抜けるのは、ゲイシャらしい極めてクリーンで気品のあるジャスミンのフローラルノート。中米の洗練されたエステートが生み出す、綺麗さ・風味を感じることができました。
さらに、驚くべきは、その直後に強固で骨太な酸の輪郭がはっきりとあらわれることです。それは、中米で育てられたゲイシャでは出会うことのないものでした。クエン酸主体の軽快な酸ではなく、大地に深く根を張ったような芯の太さをもった酸は、まさしくアフリカでしか生まれない味わいなのです。
アカシア・ヒルズ農園がふたつの特徴を見事に両立できているのは、農園のあるカラツ地方オルディアニ村が唯一無二のテロワールをもち、それを極限まで引き出すことに成功しているからです。
オルディアニ村は数千~数万年前の火山活動によって形成された、比較的若い表土をもった土地に位置しています。時間的なスケールでみると中米の生産国と同等で、風化が進んでいないため土壌の団粒構造が保たれているので水はけがよく、コーヒーノキの根は健やかに呼吸することができます。そうした環境が、アフリカでは出会いづらいクリーンカップを生むベースとなっています。
いっぽうで、地下内部に存在するマグマの性質は中米と根本的に異なります。中米ではプレートの沈み込みによってマグマが生まれるのに対し、エチオピアからタンザニアへと至る東リフト・バレーでは、地球深部からプルームと呼ばれる高温の物質が湧きあがることで引き裂かれた大陸からからマグマが生まれています。そのため、火山から噴出する火山灰には、リン灰石に代表されるリン酸塩鉱物が豊富に含まれています。それこそが、アフリカらしい力強さの源となります。
若い土壌でありながらも、圧倒的なリン酸塩鉱物を湛えた土壌が生み出すテロワールを、一杯のコーヒーとして定着させるために、彼らは広大な農園を緻密な区画に細分化してチェリーを厳格に管理しています。そのうえで、最新式のミルによるパルピングや、アフリカンベッドの上に遮光ネットを施して乾燥をあえて遅くさせる中米式のシステムを徹底しています。
彼らが栽培からプロセスに至るまで、莫大なコストをかけて取り組んでいるのは、土地のもつポテンシャルを100%表現すれば、世界中でアカシア・ヒルズ農園にしかない味わいが手に入ることを確信していたからなのです。
ゲイシャという品種名をみたときに、私たちはどうしても中米の洗練された味わいを思い浮かべるでしょう。しかしアカシア・ヒルズのゲイシャは、それとは一線を画す、アフリカとゲイシャという、まったく新しい組み合わせの価値を提示してくれます。タンザニアの地で生まれた、新しいスタイルのゲイシャをお楽しみください。
(佐藤)

Roast
今回のアカシア・ヒルズのゲイシャは、とても密度の高い豆でした。そのため、投入温度は高めに設定しつつ、徐々に火力を強めながらじっくりと初期カロリーを充てていく方法をとりました。
また、ゲイシャ種のもつフローラルな印象を最大化するために、なるべく1ハゼから早めに焙煎を終了するようにしています。そうして焙煎された豆は、華やかなフローラルさとハチミツを思わせる甘さが特徴のカップとなっています。
(今川)








