記事: BEANDY Silk Dripper - KENYA TAMBAYA / SL28, SL34(PEABERRY)WASHED

BEANDY Silk Dripper - KENYA TAMBAYA / SL28, SL34(PEABERRY)WASHED
レシピをつくるにあたって、まず一度抽出をおこなってみたところ、想定以上に濃度が高く、味も強く出やすいというのが、今回ご紹介するケニア/タンバヤのピーベリーの第一印象でした。
焙煎士によると、ピーベリーは球体に近い形状のため焙煎時にフラットビーンよりも熱が均等に入りやすく、内部蒸気圧も逃げにくいため細胞壁が脆く仕上がるそうです。そのため、成分が素早く溶けだし、通常どおりに入れると過剰抽出となり、ケニア特有の明るいフルーツ感が重い苦味に隠れてしまったのです。
成分が溶けだしやすい豆は、コーヒーとお湯の接触時間がすこしでも偏ると、過剰抽出になってしまいます。今回のレシピでは、フラットボトムのドリッパーを用いて粉層の高さを抑えることで、上下で発生する接触時間の差を減らしています。
さらに、挽き目を粗挽きに、投数も3 投にすることでレシピ側でも抽出効率を抑え、 クリーンで明るいフルーツ感をクリアに引きだしています。ぜひ、お試しください。

Origin
みなさんは「ピーベリー(PB)」と呼ばれるコーヒー豆をご存知でしょうか?
ピーベリーとは、品種ではなくコーヒーの公式規格のひとつです。通常ひとつの果実内で2 粒の種子(平豆/フラットビーン)が向かいあって育つところ、一方の受粉不全により1 粒の種子のみが果実内のスペースを独占して丸く育った「丸豆」のことを指します。
コーヒーの等級基準は、たとえばエチオピアの欠点基準数、中米の標高基準、ケニアのサイズ規格など生産国ごとに違いますが、豆の形状によって選別されるピーベリーも、それらの規格と横並びでロットが展開されます。
しかし、生育から別物ともいえるピーベリーは味わいも異なります。さらに、果実へ供給される栄養が1 粒に凝縮されるため同じロットのフラットビーンと比べて高密度に育ちやすく、また、球体に近い形状をしていることから焙煎時に均一に熱が伝わりやすいアドバンテージももっています。その意味でも、他の規格とは一線を画す特徴をもっているといえるでしょう。
最近は見かける機会も減っていたピーベリーですが、過去にアカシア・ヒルズ農園のゲイシャ種を飲んだとき、そのポテンシャルを再認識したことがあります。AA やAB/PBなど複数あるサイズ規格のロットを飲み比べてみると、ピーベリーを含むロットのほうがより際立ったフレーバーが感じられたのです。
そして、今回ご紹介するケニア/タンバヤのピーベリーは、とりわけ、AAやABと比較したときの滑らかな口当たりと角のなさが印象的だったロットです。
ピーベリーは自然の偶発的な現象から生まれるため、収穫量全体のわずか10%前後しか収穫できない、希少なコーヒー豆です。昨年はカッピングすることすら叶わず、今回ケニアを訪れて買いつけられたのも、わずが360kgという、小サイズのロットでした。
タンバヤのあるムクルウェ・イニは、アバーディア山脈とケニア山に挟まれた山麓から南へ抜けた、開けた丘陵地に位置しています。濃い霧や雲が滞留しにくく、ケニア屈指の豊かな日照時間が確保されるエリアです。標高は約1,800m。山頂直下のような極端な冷え込みはないものの、夜間は10℃近くまで低下します。日中の強い日差しによる活発な光合成で糖分や密度を蓄え、夜間の冷え込みで呼吸代謝が抑えられることで、蓄積された成分を逃さず閉じ込めています。
そうした環境で育ったピーベリーは、オレンジやプラム、カシスのようなフルーツの印象がはっきりとしたコーヒーに仕上がっています。ケニア特有のサワー感や荒削りな部分が抑えられ、甘さが綺麗に感じられ、やはりピーベリーは他の規格とは分けて考えられるべきものだと強く確信しました。産地や品種、精製方法に注目が集まるスペシャルティコーヒーでは、コーヒーの「規格」に目を向ける機会はすくなくなっているかもしれませんが、ピーベリーという規格のもつ構造的なおもしろさと、カップクオリティの新たな可能性をぜひ体感してください。
(佐藤)

Roast
私が焙煎を担当するようになってから、初めて取り扱うピーベリーのロットです。
ピーベリーは密度が高く、スクリーンサイズが小さいため、その形状からも独特の焙煎アプローチが必要となります。とくにドライフェーズでは、フラットビーンのように高温で焼きはじめてしまうと、外側だけ熱が入り、いわゆる「外焦げ・中生」のような状態になってしまいます。
くわえて、私の経験上、ケニアの豆は豆温度が上がりやすい傾向にあります。そのため、全体的な火力をやや低めに設定し、タイムが短くなってサワーになることを防いでいます。
そうしたアプローチのもと、弊社の浅煎りのコーヒー豆のなかではデベロップメント・タイムをやや長めにとることで、甘さをともなったジューシーな酸を引き出すことに成功しました。
(今川)








