
【Portrait of a Barista】塩島麦 / 学芸大学店
ウッドベリースタッフのオリジンや内面に迫る「PORTRAIT OF A BARISTA」
今回は学芸大学店の塩島さんに、6つの質問を答えていただきました。
Q1 生まれ育った街について教えてください。
神奈川県横浜市の鶴見区です。区のなかでも川崎市に隣接した、鶴見川沿いの平坦な街で、坂がほとんどありません。住宅街なので目立つものはありませんが、私にとっては町内ごとに子どもたちが集まって御神輿を担ぐ秋祭りがとても愛着のあるイベントです。大人になったいまでも、秋になると聞こえてくる御神輿の音や子どもたちの声、その雰囲気が大好きです
Q2 バリスタを目指したきっかけは?
もともと、身近な人たちが毎日を楽しく豊かに過ごせるよう、整体師として身体と心の健康を支える仕事をしていました。ただ、定期的に通っていただく必要があるので、もどかしさを感じることもありました。
そんな経験から、もっと手軽に、気持ちの安らぎや「楽しい」と思える時間を届けられる仕事をしたいと思うようになって。私自身、カフェで過ごす時間が心の切り替えになったり、幸せな気持ちになれたりして、とても大切な時間だったこともあり、バリスタに憧れるようになったんです。
いまは、常連のお客様と、コーヒーの話題だけでなく日々のことをお話しできるようになったり、初めてご来店された方にご提案をして「幸せな気持ちになれました」などと言っていただけたりすると、願っていたことがかたちになっているように感じられて嬉しいです。
Q3 好きなコーヒー豆を教えてください。
エルサルバドル/サンタ・フェ農園のパカマラ種が好きです。好きなミュージカルの『RENT』のなかに「サンタ・フェ」という曲があって、初めてのカッピングの際に、名前が気になって飲んでみたんです。
明らかにほかのコーヒーとは違うインパクトがあって、「なんだこれは?」とコーヒーの概念を覆される味でした。味の違いもわからない段階だったのに、シードルやスパイスのような味が感じられることにびっくりして、さらに、COE のオークションで単独落札されたお豆だと聞いて「そんなこともできるんだ!」と二重に驚きました。
コーヒーを淹れられるようになったいまの自分だったらどう表現できるんだろう?と、叶うことならもう一度試してみたいと思うくらい忘れられないコーヒーです。
Q4 いまハマっているカルチャー(本や音楽、映画など)を教えてください。
「HERALBONY(ヘラルボニー)」という、福祉施設に在籍するアーティストの作品をもとにプロダクトをつくっているブランドが好きで、エコバッグやハンカチなど、いろいろなグッズを使っています。
障害のある方の「支援」ではなく「パートナー」として対等に接することを掲げ、作家や施設に適正に還元できる価格で販売している点など、ウッドベリーの取り組みとも通じる部分があります。展覧会にいくと、スタッフさんが作品が生まれた背景を話してくれるのも似ています。コーヒーと同じで、その背景がわかるとより愛着がわいて特別なものになる。愛とリスペクトの気持ちをもち、それをまた誰かに渡していくことで、想いがひろがっていく。それは本当に嬉しくて素敵なことだなと思います。
Q5 最近食べておいしかったものを教えてください。
富ヶ谷にある「Meals」というお店が最高でした。ランチでは旬の素材を使った一汁三菜の定食が楽しめるのですが、食材はどれも身近なものなのに組みあわせ方にひと工夫もふた工夫もあって、どの料理からも丁寧さがものすごく伝わってきます。
最初に訪れたのは3月ごろで、デザートに出された桜のアイスをひと口食べた瞬間、心に訴えかけてくるものがあって涙が出てきて、自分でもびっくりしました。
定食は月替わりでメニューが変わるそうなので、毎月通いたくなるお店です
Q6 これからの未来のためにしていることは?
「いまこの瞬間を大切にすること」が結果的に未来につながるものだ、と思いながら日々を過ごしています。
たとえば「楽しい」と感じることをその場でちゃんと楽しんだり、目の前にいる人にしっかり向きあって「ありがとう」や「好き」といった気持ちを素直に伝えるようにしたり。あとから「言っておけばよかった」と後悔するのが嫌で、そのときにしかできないことを逃したくないんです。
私は好きな俳優さんが何人かいて、舞台やイベントに行くことが好きなのですが、コロナの時期に一気にエンタメがなくなってしまったことが本当に辛くて、楽しめるのはいまこの瞬間しかないんだと、強く感じたんです。
また、最近も祖父を亡くして、「もっと会いにいっておけばよかった」と思うこともありました。だからこそ、未来にそういう想いを残さないように、日々を丁寧に、楽しく過ごすことを大切にして、あとから思いだしたときに「あの時間は幸せだったな」と感じられるような瞬間を、できるだけ増やしたいです。それは自分にとっても、周りの大切な人たちにとっても、未来の心の支えにつながると思っています。