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記事: Our Shared Mission : Why We Keep Building Stores

Our Shared Mission : Why We Keep Building Stores

Our Shared Mission : Why We Keep Building Stores

Part1 私たちがお店をつくりつづける理由 木原 武蔵

昨年からつづいた新規出店も、今年3月の大井町店でいったんひと区切りとなりました。現在、東京・神奈川に11店舗を構えるウッドベリーコーヒーですが、じつは創業時は、お店を増やすことなど考えたこともありませんでした。
いまでもお店を増やしたいと思っているわけではない。そう言うと語弊があるかもしれませんが、「コーヒーをとおしてよりよい世界をつくる」という理念のもと、コーヒーに向き合ってきた結果であり、いろいろな人との出会いがあってこそ、という気持ちのほうが強いのです。
ウッドベリーは今月で創業14周年を迎えます。そんな私たちのお店づくりの歩みを振り返ってみたいと思います。

ウッドベリーコーヒーの始まり

ウッドベリーは、2012年に私の地元である用賀の小さなロースターカフェとして始まりました。父の病気の発覚と東日本大震災が重なり、留学していたアメリカから一時帰国した翌年、私が21歳のときのことでした。アメリカでサードウェーブコーヒーの文化に触れた私は、帰国後、下北沢のカフェで働きながら、ふたたびアメリカにもどるかどうか悩んでいました。父が亡くなり、残された母のためにも自分のためにも、大学を辞めて日本に留まり、地元でお店をつくりたいと考えたことが、そもそものウッドベリーの始まりでした。
そのため、最初は自分のためにお店をやっていたにすぎません。バリスタからスタートして、目の前のお客さんにコーヒーを提供する。そして、焙煎機を買って試行錯誤するなかで、コーヒーを深く知ってゆくこと自体がなによりも楽しかったんです。

私がお店を始めた2012年は、まだ日本ではスペシャルティコーヒーを取り扱うお店は数えるほどしかありませんでした。業界のなかでは比較的立ち上げが早かったこともあり、年齢の近い友だちがどんどん増えていき、スペシャルティコーヒーをひろめようという仲間意識が芽生えていきました。
しかし、一緒にお店をやるといっても、店舗はひとつしかない。それならもう一店舗つくろうということで、2014年に用賀の2号店をオープンすることにしました(現在は閉業)。その後、16年に代官山店を開いたのも、同じような理由からでした。
渋谷店(2019年)もまた、知り合いの会社がもっていたカフェを手放すことになり、頼まれて引き継いだかたちでした。
スタッフの人たちの雇用も、常連のお客さんの居場所も守りたい。それらをなくすくらいなら、自分たちが受け継いだほうがよいだろうという判断でした。

ちょうどそのころは、豆の卸先も増え、そろそろ焙煎機の容量を増やしたいと思っていたタイミングでもありました。
それまで用賀で使っていた4キロの焙煎機を7キロのものに買い替え、渋谷店で焙煎をするようになりました。
つまり、最初の用賀店以外は、自分からお店を増やしたいと思って始めた店舗はひとつもないんです。お店をつくるのは大変だし、失敗するリスクもある。正直いえば、気は進みませんでした。
でも幸いなことに、コーヒーをとおしていろいろな人との出会いや、つながりを得ることができた。そのなかで求められたことに応えようと必死にがんばった結果でした。

いまでも私個人としては「焙煎さえできればよい」というマインドは、あまり変わっていません。「お店をたくさん出してすごいですね」と言っていただくこともありますが、ビジネス面は知らぬ間にひろがっていっただけで、コーヒーと生産者に向き合いつづけてきた意識のほうが強い。だからこそ、ウッドベリーはまだ、ようやく入り口に立ったくらいの感覚なのです。

to make the earth a better place

私たちが掲げている「コーヒーをとおしてよりよい世界をつくる」という理念の土台は、遡ると、徐々にメンバーが集まりはじめた 2017、18年ごろにつくられたものでした。
「どんなコーヒー屋さんになりたいか?」と、ブランドの理想像を考え、みんなの意見を擦り合わせてゆくなかで、とりわけ、産地に還元したいという想いを強く抱くようになったのです(それを引き継ぎ、21年に再定義をおこなったブランドのアイデンティティについては、以前ロゴリニューアルについて取りあげた回 [ISSUE42、43] で詳しくお伝えしています)。
スペシャルティコーヒーにおいて、トレーサビリティを確保し、品質に対して適正な価格を支払うことは、定義のひとつでもあります。それゆえ、ダイレクトトレードはスペシャルティコーヒー文化においてとても重要な手段のひとつなのですが、当時の私たちはまだ商社や共同購入をとおして買いつけることしかできていませんでした。もちろん、そうはいってもトレーサビリティや適正価格での取引が失われるわけではありませんが、感覚的には産地に還元している実感をもてずにいたのです。

また、ブランドの理想像を考えるにあたって、丸山珈琲さんの存在は、私たちにとってとても大きな指標となりました。1991年創業の丸山珈琲さんは、当時すでに25年の歴史をもち、日本のコーヒー業界に多大なる貢献を果たしていました。私たちは、その当時の丸山珈琲さんに20年かけて追いつきたいと思い、3つの目標を立てたのです。

ひとつめは、ダイレクトトレードをおこなうこと。ふたつめは、バリスタチャンピオンを輩出すること。そしてみっつめは、COE(Cup of Excellence)受賞銘柄を購入し、ジャッジも務めること。それらはどれも、丸山珈琲さんが成し遂げてきた偉業でした。
丸山珈琲さんの買いつけ量に追いつくためには、店舗だけでなく卸しやスーパーでの販売など、さまざまな方法があります。ただ、まったく同じ方法で到達できる場所ではない。どうすれば丸山珈琲さんに追いつけるだろうかと、ウッドベリーの強みを考えたときに、カフェでの顧客体験を褒めていただくことが多いことに気がつき、まずは自分たちのできることをがんばろうと、店舗を増やしてゆくことを考えるようになったのです。

使命感が生まれた日

いつかは必ずダイレクトトレードをして、生産者さんに直接お金を渡したい。
当時の私たちが描いた夢のひとつが叶ったのは、2022年のことでした。以降、いまも毎年継続しているグアテマラでの自社農園プロジェクトとエルサルバドルでのダイレクトトレードは、ウッドベリーにとって大きな転機となりました。
ダイレクトトレードを始めるにあたって、私は生豆の買いつけにかんする海外の文献を読んでみました。日本のスペシャルティコーヒーについては、10年間の営業のなかで、ある程度の知識をつけていました。しかし、ダイレクトトレードとなると世界と同じ土俵で向き合わなければならない。海外ではスペシャルティコーヒーや買いつけがどのような規模や基準でおこなわれているのかを知る必要がありました。
タイトルは忘れてしまったのですが、その本には「まず5カ国を回り、それぞれコンテナ単位(20トン)で輸入することがスタートライン」だと書かれていて、日本と海外の市場規模のあまりの違いに衝撃を受けました。
その差を示す指標にはならないかもしれませんが、じっさい、満を持して臨んだ初年度のダイレクトトレードでは、5つの農園から合計で3〜4トンを買うだけでも精一杯で、とても悔しい思いをしました。

そのうえ、力不足を強く感じたのは、帰国して1カ月後に、私たちが訪れたミレイディ農園の農園主であるエベル・ディアスさんの訃報が届いたときのことでした。ミレイディ農園は、前年のCOEで1位を受賞した素晴らしい農園のひとつです。品質向上のために努力を欠かさない姿を目にして感銘を受けた直後に届いた訃報に、愕然としました。
その年に直接つながりをもったのは私たちだけだったようで、現地のパートナーから「彼らの家族を助けるために、もっと多くのコーヒーを買ってもらえないか?」と相談を受けました。
しかし、私たちの予算もすでに尽きていました。そこで私たちはクラウドファンディングを立ち上げ、ご支援いただいた約300万円を追加購入に当てたものの、それでも全量を引き取ることはどうしてもできませんでした。
くわえて、いまでももっとも深い付き合いのあるトレス・ポソス農園からも追加購入のオファーをいただきましたが、コーヒーが美味しいうちに使い切れる量ではなく、泣く泣く断らざるを得ないということもありました。

生産国では、残ってしまったロットは国内流通品に回り、スペシャルティ市場での販売価格の半値以下で取り引きされてしまいます。その意味でも私たちが買い取ることで、生産者さんに努力に見合った金額を渡すことができる。ダイレクトトレードがもつ、たんなる取り引きを超えた価値を実感したからこそ、悔しさとともに、大きな使命感を抱くようになったのです。

ようやく見えてきた景色

2020年に旗艦店である荻窪店、22 年に学芸大学店をひらいたのち、ダイレクトトレード初年度に抱いた挫折にも似た気持ちと使命感を胸に、私たちはお店をつくりつづけてきました。
現在、私たちがダイレクトトレードをおこなっているのは、エルサルバドル、パナマ、ケニア、エチオピアの4カ国です。ほかの生産国にも行けるようになってきましたが、本格的なダイレクトトレードまでには至っていません。
また、量としても自社コンテナで輸入できるようになったものの、たとえば今年度のエチオピアとケニアではものすごくがんばっても7トンと、1コンテナを一杯にするには及ばず、まだ効率的とはいえません。
ただ、初年度の買いつけ量が3〜4トンで、諦めざるをえなかったトレス・ポソス農園の追加購入のオファーは800kgだったことを考えると、着実に歩みを進められている。「5カ国1コンテナ」というスタートラインが、ようやく現実味を帯びてきたと感じています。

それも、すこしずつお店をつくり、さまざまな街でお客さまにコーヒーを買っていただけているからこそです。
振り返ると、その道のりは平坦なものではありませんでした。たとえば23年にオープンした鎌倉店は、べつの場所での出店計画が急遽立ち消えとなり困っていたときに、偶然スタッフの知り合いをつうじて出会えた物件でしたし、ベーカリー(24年)は、カンパーニュの仕入れ先の製造が追いつかなくなり、製造部門から立ち上げをおこないました。また、1年に1店舗のペースを守りたいと考えていたものの、さまざまな事情で25年から26年にかけて立てつづけに商業施設に4店舗をオープンすることになったり、必死にここまで進んできました。
とはいえ、無闇に店舗を増やしてきたのではなく、どの店舗も人とのつながりがあってこそ、つくることができたお店であることには変わりはありません。

これまでも、いまでもさまざまなお誘いをいただくことがありますが、私は、熱意や同じ価値観を共有できているか、ということをなによりも大切にしています。そうすることでようやく、ウッドベリーがその街になくてはならない存在になれる。その確信は、この14年間の道のりのなかで揺るぎないものとなっています。

オリジナルマガジン”Pneuma”ISSUE48より抜粋

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