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Giving Ideas Shape : Rethinking Coffee Packaging

Giving Ideas Shape : Rethinking Coffee Packaging
Part02 来るべきリサイクルのかたち
田井 竜之介(株式会社田井屋/ MTPAK COFFEE JAPAN)× 井上 心平
ウッドベリーコーヒーのロゴとパッケージが新しくなって、1年が経ちました。みなさまの暮らしに私たちのお店や商品が溶けこみ、「よりよい世界をつくる」ための導きとなるように。そんな私たちの想いを、パッケージをとおして形にしてくださった株式会社田井屋/ MTPAK COFFEE JAPAN の田井竜之介さんをお迎えし、リニューアルを担当した井上との対談をお届けします。
今月は、パッケージ細部のこだわりの数々から、私たちがもっとも重視したリサイクル性についても詳しくお話しいただきました。

コーヒーパッケージへのこだわり
── ウッドベリーのパッケージの制作過程について具体的に教えてください。
井上 デザイナーにフラットボトムのデザイン案を依頼し、MTPAKさんとはそれを袋の形に落としこむ作業を進めていきました。サイズから素材、加工、印刷まで、本当に自由度が高く、なにから決めたらよいのかわかりませんでした。
田井 まずは内容量を伺い、100gと200gのツーサイズ展開という希望にあわせてサイズを決めていきました。
井上 クリックポストで送付している「暮らしに息づく定期便」の外箱に2~3袋が綺麗に収まることも重要でした。
田井 各辺の比率も自由に調整できるので、形状のイメージを伺いつつ、箱のサイズを考えて縦長のフォルムに決まったと記憶しています。そのうえで、サイズサンプルを手加工でつくり、じっさいに豆を詰めていただいたり、棚に置いて立ち姿を確認していただきながら、微調整を繰り返していきました。
また、焙煎度によるバリエーションをもたせるとともに、繊細なグラデーションのデザイン案だったので、デジタル印刷でどれだけ正確に表現できるかも、こだわったポイントでしたね。
井上 新パッケージを公開したのは昨年のSCAJでしたが、MTPAKさんでつくったこともあって、すごく目を引いていたのを覚えています。リニューアル時にオープンした二子玉川店は、百貨店内の店舗らしく大きな商品棚があるので、パッケージが一面に並ぶと印刷のグラデーションがとても綺麗で壮観でした。
田井 スタンドパックは正面の印刷面が湾曲してしまうのに対して、フラットボトムはフラットにみえるので、売り場や棚に並んだときの視認性が高いんです。
印刷デザインもフィルムや加工によって印象が大きく変わるのですが、じつは採用していただいた「フルマット加工」は日本ではあまり見られない技術です。
一般的なマット加工はマットPET やマットOPPのようなあらかじめ加工されたフィルムを使用してつくられたパッケージが多いのですが、フルマット加工はあとからコート加工を施しているため、光沢感がほとんど残らず、手触りもサラサラとした高級感のある仕上がりになります。
井上 数ある選択肢のなかからフルマット加工を選んだのは、初めてサンプルを触ったときに、あまり経験したことのない手触りだったことも大きかったです。
田井 素材的にも全体的な質感に統一感があり、やわらかく、生活に馴染むような手触りのパッケージになりましたね。

── 素材はどのように選んだのでしょうか?
井上 強度や気密性を保ちながら、可能な限り環境負荷の低い素材を使いたいという強い希望がありました。そのなかで、フルリサイクルのプラスチックと紙素材のどちらがよいかで迷い、MTPAKさんと相談を重ねました。
田井 今回選んでいただいたのは、リサイクルしやすいようにLDPE(低密度ポリエチレン)単一素材でつくられた、モノマテリアルフィルムという素材です。
そのほか、紙素材を袋状に接着する際に使われるポリエチレンの代わりに、PLA(ポリ乳酸)という植物由来の樹脂を使用した生分解性パッケージもつくっています。ただし、土のなかに入れるだけで分解されるわけではなく、「商業的コンポスタブル」といわれる管理された環境で分解されるものになります。
井上 プラスチックゴミのリサイクルが整備された自治体が増えていることもふまえ、より有効性の高そうなモノマテリアルフィルムを選びました。
── 具体的に、モノマテリアルフィルムとはどういうものですか?
田井 リサイクル性については後ほど詳しくお話ししますが、まず、基本的に食品などに使われる軟包材は複数のプラスチック原料で構成され、多層構造になっていることがほとんどです。たとえばPET樹脂は印刷適性が高く、ナイロンは衝撃に強かったり、ポリエチレンは融点が低くシールにできたり、素材によって機能性や特性が異なるため、目的に応じて組み合わせることで、食品の賞味期限を長く保っているんです。
当然、コーヒーのパッケージも、豆を劣化から守る必要があり、その主な原因となる酸素・水分・光の3 つの要素をカットしなければならないので、他の軟包材同様に多層フィルムのパッケージが一般的でした。それを単一素材で実現するのはなかなか難しかったんです。
── MTPAK の独自技術なのでしょうか?
田井 いえ、世界を探せば近い技術をもったメーカーはあります。ただ、すくなくとも私の知る限りでは日本にはありませんでした。
MTPAKの技術面でいえば、私がもっとも驚いたのはカードスロット加工でした。パッケージの一層目に切り込みを入れてポケットをつくっているのですが、どうやっているのかまったく見当がつきませんでした。
井上 接着していないのが本当に不思議ですよね。以前のパッケージではinfoカードをクリップで留めていましたが流通面を考えると変えなければいけない要素のひとつでもありました。お店と同じ体験を家でも楽しんでいただくためにもカードをなくしたくはなかったので、どうやってパッケージに落としこむかはかなり悩みました。
シール化することも考えましたが、裏面がなくなることで農園さんのことを伝えられなくなってしまうし、お店との統一感が失われてしまう。あるいは、カードスロットを貼りつける方法もありましたが、違うマテリアルが含まれる可能性が高く、それはそれで理想のかたちではありませんでした。
そうした検討を重ねるなかで、今回のカードスロット加工を見つけて、これなら分別の手間もなくリサイクル性も確保できると思ったんです。
田井 カードスロットの部分だけ不安定な状態で穴が空いているわけですが、たとえば2層のフィルムの1層目だけを切ってしまうと、フィルムによってはすぐに裂けてしまいます。しかし、ポリエチレンには柔性があり単層でも強度が高い特徴があるため、その心配がないんです。モノマテリアルフィルムと相性のよい加工だと思います。
井上 フラットボトムで自立するので、開封後も見映えが悪くならないようにポケットジッパータイプのチャックを採用したり、自宅でもコーヒーを楽しんでいただくための工夫を詰めこみました。

持続可能なパッケージづくりのために
── モノマテリアルフィルムがリサイクルしやすいのはなぜですか?
田井 まず、回収からリサイクルの流れについて簡単にお話しします。自治体にもよりますが、都内の多くでは食品トレーや軟包材などのパッケージは「容器包装プラスチックゴミ」として回収されたのち、素材や柄・汚れの有無などで選別されます。私たち田井屋もリサイクルセンターを事業としておこなっていますが、作業者が手作業で選別したり、比重や風で選り分ける選別機を用いたりもします。そして、たとえばポリエチレンとして集められたものは破砕され、熱で溶かされたのちにペレット状に固められ、パレット(工場や倉庫で使われる荷台)や農業資材として再生されます。つまり、マテリアルリサイクル(廃棄物を新たな製品の原材料として再利用する方法)のためには、素材ごとに分別する必要があるんです。
ところが、先ほどもお話ししたように、一般的な軟包材は複数の素材が張り合わされています。それをあとから分解するのは非常に難しく、コスト的にも現実的ではないため、じつはプラスチックゴミとして回収されたとしても基本的には焼却されてしまうのが実情なんです。対して、モノマテリアルフィルムは分解する必要がないので、回収されたのちに業者の手で分別されて確実にリサイクルの流れに乗せることができる。それが最大の違いであり、利点なんです。
── どのようにほかのプラスチックゴミと分けられているのだろうと疑問でした。
田井 モノマテリアルフィルムがリサイクル効率がよいことはまちがいありません。ただ、このパッケージが、また同じパッケージを構成するフィルムになるような完全なリサイクルが可能かといえば、それはまたべつの、インフラ面の課題として残っています。もちろんそのような循環が実現することが理想ですが、印刷のインクや食品の油分が残った軟包材を、また食品用パッケージとして再生するところまでは技術的にもインフラ的にも追いついていません。
井上 仮にお店でパッケージを回収して、それを再利用できたら理想的ですね。
田井 スーパーだとトレーの回収ボックスが置かれているお店がありますが、たとえば食品トレーメーカーのエフピコさんは、回収したものをもう一度トレーとして再生する技術をもっています。そうした取り組みが、コーヒーパッケージに限らず、軟包材でも実現できれば大きな一歩となるはずです。
── そうした未来に向けて、リサイクルしやすいモノマテリアルフィルムを使用することの意味がありそうですね。
田井 そうですね。2022年に施工された「プラスチック新法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)」でも単一素材のパッケージが推進されており、もっと世間一般にひろまるべき素材・技術だと思っています。
ちょうど今年の8月に、EUでは「PPWR(Packaging and Packaging Waste Regulation /容器包装および容器包装廃棄物規則)」が適用され、(以前までの「指令」から「規則」へと)より包括的で具体的な制度へと強化されました。プラスチック資源の循環を目標に、2030年には包装のリサイクル性に応じてA・B・Cの3段階に評価し、基準を満たさないものはEU市場には投入できない仕組みが導入される予定です。
そのように、世界的な流れとしてもリサイクル性の高いモノづくりの重要性はますます高まっており、単一素材のパッケージを使うことには大きな意義があります。その先に、軟包材をふたたびパッケージとして生まれ変わらせられる仕組みやインフラができあがってくるのではないかと思います。
井上 私たちには、事業拡大にともなって発生するゴミを減らしたり、そもそも生み出さない仕組みづくりを考える責任があります。
今回、貴重なお話をたくさん伺うことができ、引きつづき製品のリサイクル性に対して意識を向けつつ、パッケージを回収など、より効果的な方法があれば取り組んでいかねばならないと、思いを強くしました。本日はありがとうございました。
田井 ありがとうございました。







