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記事: Closing the Loop : Coffee Compost Project

Closing the Loop : Coffee Compost Project <Part1>

Closing the Loop : Coffee Compost Project

Part01 循環を育む場所 澤口 優稀 / 冨澤 剛(冨澤ファーム)

ウッドベリーコーヒーでは、三鷹市にある冨澤ファームと協同で、使用済みコーヒーかすを堆肥として再利用するプロジェクトを進めています。生ごみを堆肥に変え農業資源として活用することは、焼却時に排出される二酸化炭素の削減につながり、カーボンニュートラルを実現するための手段のひとつ。今月からは、冨澤ファーム園主の冨澤剛さんと、本プロジェクト担当の澤口の対談をお届けします。

冨澤ファームで醸成されるもの

—— はじめに、冨澤ファームについて簡単にご説明いただければと思います。

冨澤 冨澤ファームは、東京の三鷹市で代々続く農家です。私で4代目となり、100年以上地域に根差して農業を営んできました。現在は旬の野菜を中心に、施設と露地の両方で年間30種類ほどを栽培しています。生産・販売のほかにも、体験イベントや農業体験をおこなうなど、農園を人が集まる場所にするための“場づくり”にも積極的に取り組んでいます。

── 澤口さんが冨澤ファームを知ったきっかけは?

澤口 「援農」に参加するために、職場(荻窪店) に近い農家さんを探して見つけたのが冨澤ファームさんでした。

冨澤 馴染みのない方にとっては初めて聞く言葉かもしれないのでご説明すると、援農はいわゆる農業ボランティアのことで、農業にかかわりのある人たちのあいだではひろく知られています。
私たちはいま、援農を受け入れる窓口をふたつもっています。ひとつは、毎月第4土曜日に誰でも気軽に参加できる「畑のオープンキャンパス」という援農イベント。もうひとつは「とうきょう援農ボランティア」という農家と参加希望者のマッチングをおこなう東京都の事業・ウェブサイトで、澤口さんはそちらを使って申し込んでくれたんでしたね。

澤口 はい。調べてゆくなかで、いま冨澤さんがおっしゃった“場づくり”のように、農業や食をとおして交流を生みながら地域に還元されているところが、ウッドベリーの取り組みとも近いと思って共感をおぼえたんです。
そもそも援農に興味をもったのは、グアテマラとエルサルバドルにコーヒーの買いつけに行ったことがきっかけでした。そのなかで、コーヒー生産についてだけでなく、彼ら彼女たちの生活と自然環境との結びつきの強さを間近で感じたんです。たとえば、乾季の雨量の多寡で収量が変化してしまったり、不足しがちな水資源を補うために穴を掘って雨水を貯めていたり、生活と自然は切っても切り離せないものなんですね。
いっぽう、私たちの生活はたしかに便利かもしれないけれど自然とは分断されています。たとえふだんから地球環境への意識を高くもっていたとしても、本当の意味で自分事としては感じづらく、距離があるのだと再認識させられました。
そして同時に、日本で農業に携わる方々も、かたちは違えど同じだろうとも考えるようになったんです。これまで私が目を向けてこなかっただけだ、と。そこから、東京で農業を営まれている方が大切にされていることを、自分の目で見てみたいと思うようになったんです。

冨澤 いまのお話につなげると、私たちは地域資源の循環を大切にしています。コーヒーもそうですが、たとえば生ゴミコンポストをつくったり、酵素欲サロンから出た米ぬかや、雑木林の落ち葉、大学の馬術部の馬糞など、さまざまなものを堆肥にし、土づくりに活かしています。
それらの有機物は、発生元にとってはゴミでしかありませんが、農家にとっては貴重な資源となります。堆肥づくりは廃棄物の受け皿となり、その土で野菜を育てることで還元できる。地域資源の有効活用や社会的な課題解決につながる取り組みでもあるんですね。



── 援農に来られる方は地域の方が多いのでしょうか?

冨澤 じつは公共交通機関を使ってわざわざ来てくださる方のほうが多いんです。過去、いちばん遠くから来たのは、イタリアからでした(笑)。

澤口 ええ! 海外ですか!?

冨澤 イタリアで農園と飲食関係の仕事をしていて、農業ボランティアをしながら日本全国を旅していたそうです。海外では WWOOF(ウーフ) という、農家に滞在したい旅行者と人手を求める農家をつなぐプラットフォームがあり、バックパッカーなどにはひろく知られているそうです(編注:日本にも WWOOF ジャパンがある)。国内でも北海道で援農コミュニティ活動をしている方がいらっしゃったりもしました。

澤口 遠くから冨澤ファームを選んで来られる方も多いんですね。

冨澤 ネットで東京の農業ボランティアを調べると、冨澤ファームが上位に出てくるようですね。いまでは年間で延べ1000人ほどが援農にいらっしゃいます。

—— 継続して来られる方も多いのですか?

冨澤 リピーターになってくださる方は、全体の 1/3 ほどです。「畑のオープンキャンパス」も毎回20~30名が参加していますが、半分近くはリピーターです。参加者同士で仲よくなってオフ会をしたりもしているそうです。

── 援農の受け入れはいつごろからなさっているのでしょうか。

冨澤 10年以上前から、友人や取引先の飲食店の社長と従業員が勉強のためにお手伝いにこられたりもしていました。その時点ではまだ単発的なものでしたが、あるとき週末に農家を手伝うことが趣味だという方に出会い、その方の仲間が集まりはじめ、さらには参加していた学生さんが学生グループをつくり……と、雪だるま式に援農コミュニティがひろがっていったんです。
具体的に援農を仕組み化しようと思ったきっかけは、コロナ禍でした。緊急事態宣言で行動が制限されるなか、「人の役に立ちたい」とエネルギーを持て余したたくさんの学生が、ソーシャルディスタンスを保てる私たちの畑に一気に集まったんです。ちょうど夏野菜の植えつけ時期で人手が必要なタイミングだったので、彼ら彼女たちと農作業をするなかで、どうにかこれを再現性のあるかたちにできないかと始めたのが「畑のオープンキャンパス」でした。

澤口 とくに最近は、いろいろなところで援農が流行っている印象を受けます。

冨澤 2019年ごろから援農に関心をもつ方が徐々に増え、21年から22年にニーズと噛みあってすこしブレイクしたような感じがします。
ただ土に触れてリフレッシュするだけでなく、「接待ゴルフに似ている」とおっしゃる経営者の方もいるんですよね。言われて初めて気づいたのですが、仲間とともに作業することがチームビルディングにつながることがあるようです。援農の参加者が各々持ち帰ったものを、さらに人に紹介してくれて、どんどん輪がひろがっているんです。

澤口 東京だと、土に触れられる場所が少ないからこそですよね。私たちのように飲食店で働いていたり、料理をする人たちにとっては、食材を無駄なく使うようになったり、食に対する見方が大きく変わるんじゃないかと思います。

冨澤 畑で体験したことをストーリーとして話したり、接客のなかでも活かせることがあるようですね。
私たちにとっても、援農をつうじて得たつながりに感謝することがたくさんあります。以前、台風で傷だらけになったナスの実を、知り合いの飲食店が全量買い取ってくださったんです。それをランチで安く提供するとともにカンパを募ってくださり、本当に助かりました。ただお金と物が横に流れるだけではなく、互いに困ったときに助けあうことができるような人間関係を醸成すると、そういうことも起きるんだなと実感しましたね。

東京で農業を営むこと

── いままでお話しいただいたような地域還元や“場づくり”に積極的に取り組むようになったのはなぜですか?

冨澤 もともと社会性のある活動に関心があったんです。それは、私が東京の農業がまったく評価されない時代を経験したことが関係しています。
私が中学生のころはバブルの時代で、都市開発の波が押し寄せ、東京のように人口が多く地価の高い場所で農業のような収益性の低い産業をやることに対して、世論全体が批判的でした。
私たちには代々この土地で農業を続けてきた歴史があり、町内会や消防団の活動をしたり、経済活動以外の面でも地域に寄与している面があるにもかかわらず、そうやって批判されることに悔しい想いをしてきました。それは、僕たちに限らず、東京で農業を続けている人たちの共通認識だったと思います。

── そのなかでも、東京で農業を続けられてきたのはどうしてですか?

冨澤 この農園の土地は、あくまでもご先祖から預かっているだけだという意識があるので、私はそれを後世に残したいという想いが強かったんです。それに、当時の世論は明らかに間違いだと思っていたので、非難されることの理不尽さを感じてもいました。でも、そんななかでも両親は楽しそうに仕事をしていて、その背中をみて育ったので、自分が継いで守っていかなければならないと思うようになったんですね。
そうした時代を経験したからこそ、東京で農業を続けるためにはもっと多くの人に理解してもらう必要があると、社会に貢献できることを追い求めるようになっていったんです。そのうちに参加者や地域の人が喜んでくれる姿がみられるようになり、同時に自分の心が満たされていることに気がつきました。はじめこそ、ある種の義憤のような感情を抱いていたものの、すっかりそれが楽しくなって飽きたらずいろいろなことに手をひろげるようになっていったんです。

—— その後、評価の変化は感じますか?

冨澤 明確に潮目が変わったのは 2011年の東日本大震災でした。避難場所として畑に逃げてきた人がいたり、スーパーから食料品がなくなり、危機感をおぼえた人が多かったんでしょう。震災直後も、私たちは農協が運営している直売所に野菜をいつもどおり出荷してもいたので、身近なところでも野菜や食べものを生産できる場所があったほうがよいと、農家の存在を認めてくれる人が増えた実感があります。
コロナ禍然り、非常事態のようなインパクトがないとなかなか理解されにくいのは、もどかしさもありますね。

—— 農園がある種のセーフスペースとして機能していることがもっと知られてほしいですね。

冨澤 そうですね。全国から人が集まるので、地域だけでなく、誰もが安心して過ごせる場所をつくりたいです。
そのためには人と人のつながりが大切だと思うので、参加者同士をつなげたり紹介したりすることもありますし、いまは参加者が宿泊できるゲストルームをつくったりもしています。
また、農学部を目指している学生さんや、現役の農学部生が来ることもあるので、学生たちが集まる交流の場をつくろうとも考えているところです。じつは農園を継ぐ前は歴史の先生になりたいと思っていたので、むかしから若者の成長に寄与したい想いが強いんです。すでにプロジェクト名は決めていて、『僕のヒーローアカデミア』ならぬ「僕らの農業アカデミア」という(笑)。今後は、学び舎的なこともやっていきたいと思っています。(続く)

オリジナルマガジン”Pneuma”ISSUE50より抜粋

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