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Closing the Loop : Coffee Compost Project

Closing the Loop : Coffee Compost Project
Part02 コーヒーが土に還るまで 澤口 優稀 / 冨澤 剛(冨澤ファーム)
ウッドベリーコーヒーでは、三鷹市にある冨澤ファームと協同で、使用済みコーヒーかすを堆肥として再利用するプロジェクトを進めています。冨澤ファームの取り組みをご紹介した前回につづき、今月はいよいよ「コーヒー堆肥プロジェクト」について。冨澤ファーム園主の冨澤剛さんと、本プロジェクト担当の澤口による対談をお届けします。

── 「コーヒー堆肥プロジェクト」を始めた経緯を教えてください。
冨澤 もともと私たちはべつのコーヒー屋さんと協同でコーヒーかすを使った堆肥の実験をしていました。遡ってその経緯からご説明すると、親しくさせていただいているLFCコンポスト*1さんをつうじて、鹿児島の製茶会社さん、東京のコーヒー屋さん、そして東京農業大学の研究室とで進める予定のコーヒー堆肥プロジェクトに参画してほしいと相談を受けました。要するに、コーヒー堆肥の製造・熟成をおこなう実験農場になってほしいということで、その実験を進めていたときに澤口さんが初めて援農にいらっしゃってウッドベリーで働かれていると聞きました。
そして、これもある種の偶然なのですが、私たちが利用していたCSA LOOPという農家と飲食店・消費者を結ぶサービスをウッドベリーさんも利用されていて、その名前はなんとなく記憶に残っていたんですね。
澤口 私が当時店長をしていた学芸大学店と、荻窪・鎌倉店で利用していました。
冨澤 農業収入は野菜を収穫するまでの時間がかかるため、CSA LOOPは先払いのサブスクサービスというかたちで、その間の資金枯渇のリスクを抑えながら、消費者は安定して美味しい野菜を受け取れる仕組みでした。残念なことに採算がとれず運営会社の4Natureが撤退してしまったのですが、素晴らしい試みでした。
澤口 ウッドベリーでもCSA LOOP をつうじた交流も生まれていたので続けてほしかったですね。話をもどすと、じつは学芸大学店でもCSA LOOPの契約を結んでいた農家さんとコーヒー堆肥をつくろうとしたこともあるんです。

── 以前からコーヒー堆肥をつくりたいと考えられていたんですね。
澤口 そうですね。飲食店をしているとどうしてもゴミの量が多くなってしまうので、日々の営業を終えてゴミ袋を見てやるせない気持ちになることがありました。そして、生産国を訪れたことで「最後まで使い切りたい」という想いが一層強まって、どうにか堆肥として再利用できないかと模索していたんです。
荻窪店に異動してからも同様にCSA LOOP契約を結んでいた八王子の農家さんと2~3回だけ堆肥づくりを試したりもしたのですが、やはり継続するのは難しかったんですね。そんなときに援農で冨澤ファームを訪れ、話をするなかでその八王子の農家さんと冨澤さんがお知り合いだとわかり、堆肥化プロジェクトにつながっていきました。
冨澤 ちょうどコーヒーかすの堆肥化を思ったんですね。コーヒーかすをただ生ゴミとして燃やすのはもったいないことだと思うんです。それこそ八王子からコーヒーかすの回収のためだけに足をぶのは難しいかもしれませんが、たまたま私たちは定期的に荻窪方面に行く用事があり、ついでに立ち寄ることもできたので、やってみることにしました。
澤口 最初は月に1回、冨澤さんに荻窪店のコーヒーかすを回収していただくところから始め、いまは私が社内物流の部署に移ったので、週に1回、全店舗分のコーヒーかすを直接堆肥場に運搬しています。1回あたり2~300キロ近い量があるので「こんなにもっていって大丈夫だろうか」と心配でしたが、問題ないとおっしゃっていただけたんです。
冨澤 たとえば大学の馬術部からもらっている馬糞は年間で16トンほどあるので、コーヒーかすもいくらあっても大丈夫なんですよ。
澤口 本当に驚きました。毎週これだけのゴミを減らしながら、それが農作物の栄養となっていると思うと嬉しいです。
土とともに育み、つなぐもの
── コーヒー堆肥はどのようにつくられているのでしょうか?
冨澤 私たちの農園ではさまざまな地域資源を回収して堆肥づくりをしているので、そこにコーヒーかすも混ぜています。というのも、コーヒーかすだけだと分解はされるものの若干泥に近い状態になってしまうからです。堆肥は土をふかふかにして通気性を改善するような物理的な構造を保った状態が理想なので、ほかの生ゴミや腐りにくい有機物を混ぜたほうがよい堆肥になります。
澤口 コーヒーかすだけだと腐りやすくなってしまうということですか?
冨澤 コーヒーかすは水を溜めすぎてしまうんです。発酵と腐敗は、分解によって人間にとって有益な物質をつくるものを「発酵」と呼び、有害なものを「腐敗」と呼ぶという違いに過ぎないのですが、保水力が高すぎると腐敗菌が増殖しやす くなってしまいます。
微生物も人間が好きなものを好み、糖質・脂質・炭水化物を真っ先に分解してゆきます。たとえば米ぬかが発酵促進剤として使われるのは炭水化物や脂質が豊富だからです。そうした有機物と一緒に混ぜ込むことで、人にも野菜にも有益な乳酸菌などの微生物が働きやすい環境ができ、発酵が進みやすくなります。
澤口 私が自宅でつくっている生ゴミコンポストについて「黒土をベースに、米ぬかや余ったヨーグルトや生ゴミを入れています」とお話ししたら「黒土をコーヒーかすに変えるのはどう?」とおっしゃっていましたよね。コーヒーかすは、生ゴミのような有機物と比べると、どちらかというとベース(基材) 的な役割をもった素材といえるのでしょうか?
冨澤 まず、黒土は、葉っぱや草や動物の死骸などさまざまな有機物が分解されてできた腐植を多く含む土のことです。いわば、すでにかなり分解が進み、安定した状態にあります。いっぽう、コーヒーかすはコーヒーの果実の種を焙煎して砕いて粉状にしたものなので、熱によって変化した炭素質の成分も含まれています。それらはすぐには分解されにくく、その意味では、土のように比較的安定した性質も一部もっているのです。
堆肥づくりにおける基材の役割は、水分や通気性を調整し微生物が働く環境をつくることなので、コーヒーかすのそうした性質には基材としてのポテンシャルもあると思います。そのため、同時にほかの有機物と一緒に分解も進むコーヒーかすを基材として使うことは理に適っていると思っています。

── コーヒー堆肥ができるまでにはどれくらい時間がかかるのでしょうか?
冨澤 コーヒーかすが完全に分解されるには、2~3カ月でしょうか。ただ、抽出に使う紙のフィルターは分解されづらく1年ほどかかってしまいます。じつはそれが理由で、最初に堆肥づくりを始めたコーヒー屋さんとは取り組みが継続できていません。
澤口 コーヒーかすだけを分けて回収するのも難しいですからね。その点、私たちがもともと使用していたフィルターは、生分解性のあるアバカ繊維(マニラ麻)でつくられていたので、試験的に堆肥にしてみたところ、1カ月ほどで分解できました。環境負荷の観点から選んでいたアバカフィルターでしたが、まさかそれが堆肥づくりにもつながるとは思ってもいませんでした。
ちなみに、ストローもサトウキビのアップサイクル品を使っており、同様に生分解性をもっているため、いまはストローも堆肥にしていただいています。
冨澤 ちなみに、堆肥の分解中は熱やアンモニアが発生するので、それを畑に入れてしまうと植物に悪影響が出ます。また、分解過程で微生物が土のなかの窒素分を一気に吸ってしまう「窒素飢餓」という現象が起こるので、ちゃんと分解されるのを待つ必要があります。
澤口 それはどうやってわかるものなのでしょうか?
冨澤 全体的に黒くなっていればOKです。あとは生ゴミが跡形もなくなっていたり、コーヒーかすだったら乾いてさらさらになっていたり。慣れれば熟成しているかは見た目でわかります。
また、熟成の目安ではありませんが、分解中に糸状菌というカビの仲間が発生して白くなっていたら上手く分解が進んでいる証拠です。
—— コーヒー堆肥が一般的な堆肥と異なる部分はありますか?
冨澤 私たちはふつうの堆肥と混ぜてしまうので厳密にはわかりませんが、東京農業大学に調べてもらったところ、植物を育てる三大栄養素(窒素・リン酸・カリウム) のうち窒素が多く含まれていたようです。
あとはやや酸性に傾く傾向があるので、土壌に入れる際にはうまく中和させる必要があります。使えないほどpH値が低いわけではありませんが、すこし癖があるかもしれません。
澤口 自宅でコーヒーかす堆肥を使って育てたジャガイモは「これ本当にジャガイモ?」と思うくらいの背丈になりました (笑)。
冨澤 それだけジャガイモが伸びるのは、やはり窒素系の栄養素が多いからかもしれませんね。どんな容器でコンポストをつくっているんですか?
澤口 最初は段ボールで、いまは衣装ケースのような大きなボックスを2つ購入し、黒いビニールを貼って使っています。堆肥プロジェクトがスタートしたときに「自分でも試してみよう」と始めただけでしたが、思いのほか簡単で楽しく、すっかりハマってしまいました。
冨澤 そういう方が多いですよね。ペットを飼っている感覚になるとおっしゃっている方もいました。
澤口 いつまのにか私も生ゴミを入れるときにエサをあげている気分になるようになりました(笑)。

── 冨澤ファームではコーヒー堆肥はどのように使われているのでしょうか?
冨澤 とくに用途をわけているわけではありませんが、収穫が終わった畑で次の作物をつくる前に堆肥を入れるので、その際に活用しています。昨年の10月ごろからコーヒーかすをいただいているので、すでに使いはじめていますね。
澤口 以前、収穫後の大根の葉っぱやお野菜の端々と一緒にコーヒーかすを畑に撒いたりもしましたね。
冨澤 そこでいまはナスを育てているのですが、ナスは肥料をすごく必要とするのでこれでもかというくらい有機物を入れましたね。
── 広義のテロワールというか、つくられた野菜や地域で出たものをもう一度土に還して、ここにしかない土ができあがってゆくのは、ワクワクしますね。
澤口 いつかコーヒーかす堆肥を使ってウッドベリーで提供するお食事のお野菜を一緒に育てられたらよいなとも考えています。お客様にとっても、自分が飲んだコーヒーが堆肥になって、その土で育ったお野菜をまたお店で食べられるというのは、素敵な体験になるはずです。
冨澤 それができたら、本当の意味で循環するようになる。理想的なあり方ですよね。ウッドベリーの店舗がハブになって、いろいろな人や場所とのつながりや、ソーシャルグッドなひろがりが生まれたらよいなと私も思うので、ぜひ実現できればと思います。







